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パネルディスカッション 写真 パネルディスカッション
			「宇宙と生命――未知にいどむ研究のフロンティア」
「宇宙探査――ロボットと人間」
向井宇宙飛行士
お金がふんだんにあれば、人間も全員宇宙に行けると思います。決まった予算の中でロボットと人間が交互に行く。今までの歴史でもそうでした。
火星探査の話だけではなく、これだけ高度な科学技術が発達してきている地球上においても、人間とロボットができることというのは、日進月歩で変わってきています。技術が進んで人間がやらなくてもいいようなものは機械にやってもらい、人間は想像力を働かせる部分をやればいいのです。科学というのは何かひとつわかると次に新しいものがでてくる。そういったものに関して、どういう方向性で行こうかとか、想像力を働かせて物事を進めていく。これはやはり人間じゃないとできないのではないかと私は思います。

宇宙から地球を見たとき、その人間の想像力というものにすごく感激しました。アインシュタインにしてもニュートンにしても、宇宙に出て行かなくてもこの宇宙の中の惑星の動きや、万有引力がどうなっているか、そんなことがわかった人たちなのです。
人間の想像力に驚かされるのは科学だけではありません。日本の古事記という神話の本に、神様がぐちゃぐちゃと地球をかき回して、筆を引き上げてぽとぽとぽととできたのが日本列島であるという記載があります。宇宙から日本列島を見ると確かにそのように見えるのです。実際に見た人が言うならわかるけれども、見ていない人がどうしてそういうことがいえるのか。それが、想像力です。それが多くの人のロマンを掻き立てて、科学なり、芸術なりを推進してきているのではないかと思います。

宇宙探査や地球探査、インナーワールドにおいても、機械と人間というのは、1+1を2より大きくするようないい協調関係をつくるためのテーマではないかと思います。

マレー博士
宇宙探査という意味において非常に中心的な問題です。
ブッシュ大統領の新宇宙政策によって火星探査がテーブルの上に乗りました。実現まではまだ遠いでしょうが、最初のステップを踏んだのです。これまでNASAは、火星の有人探査に関する研究はできなかったのです。かなりコストがかかるプログラムだったため政治的に抑えられていたのです。
火星が長期にわたる人間活動の場となりうるかどうかが、一番大きな議論になるかと思います。それはまだまだ時間をかけて考えていくべきだと思います。ですから、情報を集めて分析し、そして宇宙飛行士や宇宙の関係者がいろんな努力をすることが必要です。例えば、火星に行って温室を作り、食べ物を作ることができるのか、火星で役に立つ建物を建てることができるのか、長期間一人で生きることができるのか、そういった研究はすべてやっておく必要があると思います。

火星探査が求められているのは確かだと思います。人間が辺境へ行くことは、環境を拡大することによって、どこでわたしたちが生きることができるのかを探ることだと思います。長期的には、人間が、火星で適応できるかということが非常に重要になるでしょう。これは非常に長い歴史における課題だと思います。そのようなことが、火星探査の動機につながっているのです。
私たちは、十分慎重にお金を使って火星に人類の将来があるのかどうかということを考えなくてはなりません。金星や木星のエウロパは、熱や強い放射線などの理由から難しいですし、そしてもちろん月はやったけど難しかった。太陽系で唯一可能性があるのが火星なわけです。そういった観点から捉えれば、ちょっと違った見方ができると思います。火星かそうでないかといった場合、火星は非常に重要だと思います。
火星は、人類にとって末来のチャンスのひとつなのです。



向井宇宙飛行士
数年前、NASAのオキーフ長官が、「火星は現在すぐに行く場所ではないけれども、どうやってそこに行こうかということを考える場所である」と言ったことがあります。これは正しいと思います。今、国際宇宙ステーションを最終目標にやっていたら、そのあとに新しいチャレンジはない。周回軌道を越えて、人間が月や火星に展開していくために、どういったチャレンジがあるかということを調べるのがフロンティアであり、科学あるいはテクノロジーのチャレンジでもあります。また、予算的なチャレンジでもあります。いろんな人がさまざまな観点から自分の持っている環境を広げていくということが、フロンティアに接している人たちがやっていることだと思います。

1940年代、NASAは誰も宇宙へ行ったことがないころから、月にどうやって人を送るかという研究をしていたそうです。そして'50年代に人間が宇宙に飛び出し、'60年代の後半には月に行ってしまったわけです。
つまり、火星に行くことも、今は夢物語のように感じるけれども、真剣に考えてやっていけば、それを通じて、多くの知識を得たり、新たな技術が開発されるのではないかと期待しています。不可能なものはないのです。

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