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観測データを広く公開

「だいち」を搭載するH-IIAロケット8号機カットモデル イラスト
「だいち」を搭載する
H-IIAロケット8号機カットモデル
地球観測衛星の場合は、データを使ってもらうことに意義があります。ですから基本的に「だいち」のデータは広く公開し、使っていただくという考えで開発してきました。データの提供については、その方針を貫いていきたいと思っています。災害に関しては原則的に無料提供を想定しています。個人の研究や商用利用に関しても、おそらく今までの料金に比べると、格段に安く提供されると思います。ただ、JAXAが直接データの提供を行うのではなく、RESTEC(財団法人リモート・センシング技術センター)に、アジア地区の商用的な提供も含めてその業務をお願いすることになっています。
また、「だいち」のデータはアジアだけでなく全世界で利用していただきたいと考えています。そのため、アメリカ、ヨーロッパ、オセアニアなど各々の機関が、商用も含めたデータの配給を分担するという仕組みを構築中です。基本的には、各国の機関に関しても、「だいち」の開発の主旨を理解していただき、できるだけ安くデータを提供してくださいとお願いしています。

不具合の完全克服
「だいち」は打上げが予定よりも約1年延びてしまいました。その大きな理由は、2002年12月に打上げられた環境観測技術衛星「みどりII(ADEOS-II)」が、打上げから10ヶ月でトラブルを起こし、運用できなくなってしまったので、「だいち」は大丈夫かという話があり、一からすべて見直しすることになりました。設計だけでなく、試験や評価にいたるすべてのことを総点検するのに、約10ヶ月かかりました。
「みどりII」の不具合の原因が、軌道上で予測よりも衛星の温度が高くなってしまったことと、プラズマやイオンなどの帯電・放電の現象によるものだと言われていますが、日本には帯電・放電に関しての知見があまりなく、そのため外国の文献を参考にしながら、関連大学にも協力いただいて、いろいろな試験や評価をしてきました。その問題を理解、克服するのが技術的に大変で、時間がかかったところです。
さらに「だいち」に使われていた電子部品がリコールになるという問題が発生しました。これは同じJAXAの赤外線天文衛星ASTRO-Fで不具合が発生し、調査したところ、「だいち」も同じ部品を使っていましたので、「だいち」は不具合を起こしていませんでしたが当該部品を搭載しているユニットすべてを解体し、交換しました。

部品のリコールというのは、いつ起きるか分からないものです。自分たちが開発している衛星で直接的に不具合が発生して分かる場合もありますが、通常は、世界中のユーザーから、「このロットはおかしいですよ」という情報が月に1〜2件の割合で流れてきます。私たちはリコールという表現を使わず、「アラート」注意情報と呼んでいますが、それが世界の宇宙機関のネットワークを通じて伝わります。私たちはいつも「だいち」に使われている部品が「アラート」に該当しているかどうか気にしていました。最初に「だいち」で使われている部品が該当していたことを聞いた時はショックでしたが、リスクを最小限にしたいという強い思いで該当する部品を交換修理しました。それによってスケジュールがずれてしまいましたが、不安材料は全部消すということを最優先にしたのです。
いまは打上げ前に見つかった不具合はすべて克服し、衛星の運用の準備も含め、出来ることはすべてやり遂げたという気持ちでいます。


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