一番興味を持っていることは、銀河というものが、宇宙の中でどうやって生まれ、育ってきたかを知ることです。
ハッブル宇宙望遠鏡で遠くの銀河の光を測定すると、私たちの近傍の宇宙から予測されるよりも、明るい銀河が多く存在します。宇宙は大変に大きいために、遠方の宇宙を見るということは過去の宇宙を見るということになります。したがって、これは、昔の宇宙が今よりもずっと明るい銀河が多かったということを示しています。
銀河の主なエネルギー源は恒星です。恒星のなかで、水素とヘリウムが核融合することによって生み出されるエネルギーです。すると、上記の観測は、昔は星の形成活動が今よりも盛んであったということを示します。
ただし、銀河のエネルギー源には、もう一つあります。それはブラックホールです。ブラックホールとは、そもそも光も出てこれないものなのですから、それがエネルギー源であるというと不思議に聞こえるかもしれません。実は、ブラックホールに物を落とすと、一気に落ちなくて、ブラックホールの周りで物が高速で回転するようになります。そこで物がぶつかって熱を出し、エネルギーを生みだすのです。多くの銀河の中には、非常に重いブラックホールが存在することが分かっています。私たちの銀河系の中心にも太陽の300万倍ぐらいの重さを持った巨大ブラックホールがあることが分かっています。
このような巨大ブラックホールと、普通の恒星とは無関係のように思われます。しかしながら、現在の宇宙を調べてみると、銀河の中の星の質量とブラックホールが持っている質量は、ほぼ比例していることが分かりました。星とブラックホールが生まれる過程は全く別だと思われていたのに、実は関係しているのではないかということが示唆されるのです。昔の宇宙の銀河のなかで、どのようにして星とブラックホールが生まれてきたのか、これは大きな謎です。星の誕生も、巨大ブラックホールの誕生も、濃いガスと塵とに囲まれた中でおきていると考えられています。したがって、可視光線では見ることができません。「あかり」は塵があっても見通すことができます。星生成で輝いている銀河と、非常に重いブラックホールが、宇宙の歴史のなかでどのようにして形成されてきたのか、全く関連のないように見えるこの2つがどう関係しているのか、それを明らかにしたいと思っています。
「あかり」の最大の特徴は、「サーベイ観測」といって、全天を観測して宇宙の地図を作ることです。赤外線でのサーベイ観測は、20年前に打ち上げられた赤外線天文衛星IRASによって初めて行なわれました。IRASはわずか10ヶ月しか天体を観測しませんでしたが、その成果は天文学のほとんど全ての分野に影響を与え、これまでで最も成功した天文衛星の1つと言われています。しかし、図4に示すように、その画像は、「あかり」の画像と比べると全くのピンぼけです。「あかり」は、IRASよりもはるかに優れた解像度で観測することにより、IRASの成果を一新し、世界中の天文学者たちに影響を与えるような大きな成果を生むものと期待しています。
私たち人間の宇宙に対する知識はごく限られたものです。宇宙は、まだまだ謎で満ちています。全天サーベイ観測を成功させ、宇宙の新しい姿を解明したいと思います。
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