──9mm位の燃料だと、ロケットの機体の直径はどれ位でなければいけないか、などと逆算します。この燃料は外側と内側から燃えますから、両側から1.5mmずつ燃えていくわけです。1.5mmは何秒で燃えるか計算するためには、燃焼速度というデータが必要になります。1.5mmはどれ位の時間で燃焼するか、そのデータを日本油脂から聞いて計算してみると、温度が上がった時には燃焼が終わっていました。だからジュラルミンでも耐ちますよと糸川先生に報告しました。「よし、やろう」という事になりました。──(戸田)
──まず、燃料がどのくらいのスピードで燃えるかを実験で出さないといけません。もらったデータから考えて多分このぐらいで燃えるから、そうするとどれぐらいのガスが発生するか、それによってどのくらいの圧力に上がるかというのを計算して、それで実験する装置を作りました。──(垣見)
──その装置でまず1本燃やして、無事に燃えました。本当は12本まで入れてみたかったのですが、その次2本燃やしてみる、次に3本燃やしてみる、とやっていったわけです。4本無事に燃えたところで、ジャンプして8本入れて燃やしました。荻窪の富士精密構内のグランドにタコツボを掘ってそこに置いて、上に向けて燃やしていたのです。8本目になった時に、大きな音がして何かが上に上がって行きました。──(垣見)
──何が上がったか、すぐには分からなかったのですが、計算によれば、本来8本ぐらいで強力なボルトが切れるわけがないという先入観がありましたので判断を誤った次第です。ひょっとタコツボの中を見るとロケットのノズルが無いのです。あれ、と思ったら「ダーン」と落ちてきました。グランドは固いところですが、そこに1mぐらいめり込んでいました。どうもノズルが落ちたらしい、と掘り起こしてみたら本当にノズルでした。この燃焼装置はどういう構造をしているかというと、8ケ所の12mmニッケルクロームモリブテン鋼のボルトをそれぞれナットで締めている構造です。そのボルトが全部切れているのです。驚きました。──(垣見)
──切れて飛び散ったナットが隣の荻窪病院に落ちてしまいました。しかも入院患者がいる部屋に落ちました。病院から、何か大きな音がしてわけのわからないものが落ちてきた、と連絡があったので行ってみたら、屋根を突き抜けてナットが落ちていました。荻窪病院というのは昔の中島飛行機の付属病院だったので、大げさにならずに済んだのですが、そういう事故がありました。すぐに川越に実験場を移しました。──(垣見)
──いろいろ調べたら、燃焼速度のデータが間違っていました。そのためにガスの発生量がめちゃくちゃに多くて、内圧が上がってボルトにかかる力がうんと増えてしまい、ボルトが切れてしまったのです。──(垣見)
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