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エンジニアよ、かっこよく、胸を張れ
 

―― 「理科離れ」が叫ばれていますが、どんなふうに感じられていますか。

松尾 人口が減りつつある日本が、以前と同じような「理科系の総合力」を発揮するためには、この分野に関わる人の比率をむしろ上げていかないといけない。なのに人口は減る、理科系比率も下がるでは、日本の国力が加速度的に低下してしまいます。ここは何とか手を打たないといけないと思います。身近に感じることでいえば、エンジニアや研究者など理系の人たちはもっと「かっこよく」いてほしいと思いますね。私の知る特定の誰かがどうというわけではありませんよ、念のため(笑い)。

―― たとえばプロスポーツ選手のように脚光を……。

松尾 そう。「好きな研究ができれば、お金は問題じゃない」もいいのですが、ガバッと稼いでみんなの憧れの的になってもらってもいいわけですよ、エンジニアが。よく昔は3Kなんて言われましたけど、たとえば旋盤を自在に扱って望みの形を削り出せるというのも十分に「かっこいい」わけです。私も機械工学科で教えていますが、全然扱えないだけに(笑い)。

―― 最後に、JAXAにひと言メッセージをいただけますか。

松尾 事故調の委員となって改めて、連綿と続いてきた事故解析と改善の歴史、そしてそれが航空機と航空システムの安全性向上に果たしてきた大きな役割を実感しています。こうした仕事は地味で時間をかけて取り組まなければいけない仕事で、「思ったより5倍たいへん」なんて弱音を吐いてはいられない(笑い)。
宇宙開発の現場でも、昨年来のロケットや衛星の事故調査にたいへんな労力と時間を費やしていることを知っています。直接の当事者や関係する方々は体力と気力を奪われ、意欲を削がれてしまっているかもしれません。でも、その努力は必ず役に立つだろうし、また役立たせなければならないものだと思います。シャキッと胸を張って「かっこよく」取り組んでもらいたいと思っています。応援していますよ。

―― ありがとうございました。


松尾亜紀子さんの写真  

[インタビュー収録:2004年6月2日 慶應義塾大学松尾研究室]


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