航空宇宙の3機関が統合してできたJAXAは、研究から実用化までの一貫性をもった組織になったのですから、相乗効果を発揮してその意義を証明していかなくてはなりません。統合の成果を早期に実現することが重要だと思います。
ただし、研究開発と実用化の戦略は違います。JAXA全体としてのグローバルな観点からの戦略とは別に、研究部門と実用部門、あるいは宇宙部門と航空部門は、それぞれ戦略が異なってしかるべきでしょう。研究部門は、新しい人間の知見を求めるのですから、知恵を出して挑戦していかなければなりません。一方、ミッションが明快な実用部門については、いかに達成するかに主眼をおく必要があります。研究は「1000に3つ形になるかどうか」、実用は「リスクを最低限に抑える」という、まったく異なる世界です。このことをきちんと理解しておく必要があるでしょう。
今後、研究部門に関しては、これまで同様、限られたリソースで何に挑戦するかを見極める必要があります。そのためには、世界の動向を見ながら日本独自の分野をいかに切り開いていくかが大切だと思います。実用化部門は、日本に必要なミッションを明確にし、低コストで効率よく実現するということが重要です。
文化が違う「研究」と「実用化」の組織がひとつになったのですから、早急に一体化するのは難しいと思います。人事の交流も進めながら、全体の雰囲気をまとめていくことが必要でしょう。現在、各本部の場所が離れていて、それぞれが独立しているような形になっていますが、これは人事交流でかなり改善できると考えています。
また、いまだに残っている官僚組織的な悪弊も、今後大いに払拭していくべきだと思っています。同時に先端的なコンピューターシステムなどを導入し、経営の効率化や情報の共有化、判断のスピードアップを図ることも必要でしょう。
そして喜ばしいことにJAXAは子どもたちの教育にも、不十分ながら取り組んできました。宇宙という魅力的な素材を活かし、教育現場や企業などと連携した教育活動を、一層精力的に展開する必要があるでしょう。その中から未来の日本と宇宙開発を担う優秀な人材が育ってくれればと思います。
日本の宇宙開発はここ数年でいろいろなことがありましたが、今年は活動を従来の軌道に戻したいと思います。そのために、JAXAは新たなビジョンとポリシーを持って事にあたる必要があります。現在、JAXAは新ビジョンを策定中で、3月には完成する予定です。
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