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国際協調を活動の柱に

  国際宇宙ステーション(想像図) 宇宙開発は世界で協調して進めていくべきです。
 最も具体的なものは、国際宇宙ステーションでしょう。完成までまだ数年かかりますが、実験の場としてさらに活用される日が待たれています。今後も国際宇宙ステーションにかかわる打ち上げ、補給、人員の交代など国際的に協調していかなければなりません。また、実験や研究テーマを各国で出し合い、実行していくことも大事だと思っています。
 かつて宇宙開発は冷戦時代のアメリカとソ連の競争によって進歩しましたが、今や地球国家という観点で考える時代となりました。今では、アメリカとロシアが国際宇宙ステーションで力を合わせていますし、日本やヨーロッパも協力していますので、今後とも一層この協調関係を強化する必要があると思います。
「地球環境サミット」も国際協調の流れのひとつです。世界の首脳が集まり、今まで人間が害した地球環境の復旧を図ろうとしています。この分野でも宇宙は大いに利用できます。日本の宇宙開発は、国際宇宙ステーション同様、地球環境サミットでもその一翼を担うようになるでしょう。
 また、アジアでも宇宙に関心を持ちはじめている国が増えています。その中で先行している日本は、今後もアジアを牽引していく国として、その役割を果たしていくべきです。覇権を争うのではなく、アジア地域の各国の協調を促す先駆者としての役割を担うべきだろうと思っています。


日本の有人宇宙開発

 これはJAXAだけが決めるのではなく、国の方針として決めていく問題だと思います。2年前の総合科学技術会議で、有人飛行には当面取り組まないことになりましたが、昨年9月には少し方向転換して、将来に備える研究を進めることになりました。今後どうなるかは、研究開発のためにどれだけ投資できるかによって変わってくるでしょうが、今のJAXAの予算規模では到底無理な話です。
 2003年10月の中国の有人宇宙飛行成功は、過去10年間の懸命な努力の結果によって実現されたものです。正確な額はわかりませんが、相当投資したことは確かです。現在のJAXAの予算から見ると、人を宇宙へ送ることは困難です。本気で有人宇宙飛行を目指すなら、ある程度の資金を投入するという国家的な決断が必要になると思います。
 また、昨今言われる中国の信頼性の高さは、有人宇宙飛行を目指した結果だという意見もあります。つまり、人間を宇宙に運ぶということは、信頼性の向上に大きく貢献できる可能性があり、その観点からも、有人宇宙飛行を捨てずにやって行くべきだと思います。
 私の年齢では、宇宙旅行はもう無理でしょうが、子どもたちの将来のためには大いに良いことです。宇宙へ行きたい、見知らぬ世界へ行きたいという人間の夢は果てしなく、是非実現したいものです。20世紀の間に、空を飛ぶ夢は現実になり、さらに人間はロケットで宇宙まで行くようになりました。その進歩は非常に急激でした。このペースなら、普通の人が宇宙へ行ける日も間近に来ているような気がします。

(了)



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