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気象衛星のデータはどのように天気予報に活用されているのですか。
気象衛星は天気予報になくてはならないものです。「レーダー」「アメダス」「気象衛星」は、天気予報の三種の神器。この3つがなければ、現在の天気予報はありえません。
「レーダーで雨雲を捉えているから、気象衛星かレーダーのどちらか片方でいいんじゃないか」と言う人もいますが、レーダーは実際に雨が降っているところに電波を飛ばして観測するのに対し、気象衛星は赤外線でもっと広い範囲の温度を観測することによって雲の分布や高さを測っている。そうすることで多面的に情報を得ることができるんです。
アメダス
Automated Meteorological Data Acquisition System(地域気象観測システム)の略称。気象観測を地域ごとに細かく行うために、気象庁が1974年から全国に展開した自動気象観測システム。全国に約1300の観測点がある。
レーダー
短い波長の電波を発射し、大気中の降水粒子(雨滴、雪片)などに当たって返ってくる反射波を受信することによって、大気中の降水粒子の降水の強度、位置などを観測する装置。
昔と今とを比べると、天気予報の的中率は違うものなのですか。
'70年代前半までは実用のコンピュータがなかったので、観測データをもとに天気図を書いて予報していましたが、1977年に気象衛星「ひまわり」が打ち上げられて三種の神器が揃い、'80年代になって数値予報が本格的に導入されてから、飛躍的に当たるようになったんです。僕が日本気象協会に入った1970年頃が歩く速度だとすると、'90年代以降は、飛行機を通り越してロケットの速さくらいの違いがあります。
数値予報
観測から得られた現在の大気の状態(風速・風向、気圧、気温、水蒸気量など)を物理方程式に入れてスーパーコンピュータで計算し、将来の天気などを予測する手法。
天気図による予報が、大気の立体構造を理解し、気象に関する豊富な知識や経験を持った専門家が必要であるのに対し、数値予報は、コンピュータで客観的かつ合理的に解析できるため、多くの予報に利用されている。
天気を解説するときに気をつけていることはありますか。
天気予報の「当たる」「当たらない」について、どんな人が、どんな天気のときに、どんな予報をして、どんなことを言っているのかということは、僕らの頭の中に入っています。天気の伝え方は、解説者の手腕の見せ所。雨が降るのか降らないのか微妙でよくわからないときは、ちょっとずるいけれど「降るって言ってたかな。そういえば言ってたよね」みたいな感じに、あえて曖昧に伝えようとする時もあります。これはテクニックです。でも、気象情報は、ひとつ間違うと人命にかかわります。雪が降るとか、積もるとか、災害に結びつく可能性がある場合は、すごく強調します。災害が起こる天気の兆候を読み取り、そのパターンを頭にどれだけインプットできているかも解説者の力量なんです。
短期予報の精度が限界に近づいているのに比べて、解説のレベルがまだ低いのではないかと思っています。解説の仕方を工夫しないと、「かもしれない」と言っているのに、聞いている人は「そうなる」と思ったりするんです。解説者は、伝え方の技術をもっと学んだほうがいいと思いますね。
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