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若田 今後の予定は?
チャオ まだはっきりとは決まっていませんが、コンサルティングをしようと思っています。最後の宇宙飛行を終え、自分がこれからどのような形で貢献できるのかを考えてみようと思っています。何をするにしても、宇宙プログラムに関わることになると思います。私の情熱はそこにあるわけですから。
若田 それは素晴らしいことです。私は、2度のシャトルフライトをはじめとして、あなたと共に実に多くの任務をこなしてきました。あなたはNASAの船外活動クルーの中でも指折りの経験の持ち主ですし、私個人としても、多くのことをあなたから得ることができました。同じように、日本があなたから学べることはたくさんあると思います。
チャオ ありがとう。
若田 ところで、中国が有人宇宙飛行を成功させましたが、中国人宇宙飛行士が誕生したことについて、どう思われますか?
チャオ 素晴らしいことだと思います。私は中国系アメリカ人ですし、中国が自国の宇宙飛行士を打ち上げて、アメリカやロシアに次いで宇宙進出を果たしたことは、非常に興味深いことです。競争という点から見てもいいことだと思います。有人宇宙飛行を行う国が新たに出てきたということは、参加各国にとっても有益なことです。アメリカとしても競争心が高まり、宇宙開発の分野でリーダーとしての立場を守らなくてならないという気持ちになりますからね。
若田 NASAの次世代宇宙船の開発についてはどう思われますか?
チャオ シャトルの後継機となる有人宇宙輸送システム、CEV(Crew Exploration Vehicle)については、NASAの方向性は正しいと思います。NASAのグリフィン長官は、開発チームにさまざまな選択肢を考慮するように指示を出していて、それが良い解決策に向かって収束してきています。既存のハードを取り入れて発展させることで、より安全で信頼度の高い宇宙船を作っていく。現在のNASAの方向性は正しいと思います。
若田 日本の有人飛行プログラムについて何かアドバイスはありますか?
チャオ 宇宙探査は、それを実践する各国にとって非常に重要なものですし、日本は長年にわたって有人宇宙飛行に関与しています。国民や政治家にその重要性を認識してもらい、宇宙飛行に対する支援を継続してほしいと思います。さらに、科学を発展させ、銀河や宇宙の探求を続けてほしい。今後も宇宙分野で日本が活躍することを願っています。
若田 今後、ISSに取り付けられる日本の有人施設「きぼう」実験棟についてはどう思われますか?
チャオ 「きぼう」は素晴らしいモジュールです。「きぼう」が運用されれば、ISSの研究能力が高まりますから、いろいろな研究成果が得られると思います。「きぼう」がISSにドッキングし、コウイチが運用に携わる日を心待ちにしています。素晴らしい時代を迎えることになるでしょう。
若田 どうもありがとうございました。
若田 チャオ 写真インタビューを終えて
若田 光一

私は、STS-72、STS-92という2度のスペースシャトル飛行で、チャオさんと一緒に宇宙飛行をする機会に恵まれたことを心から感謝しています。彼は、米露の宇宙服による計6回の船外活動を経験しているNASA屈指の船外活動のスペシャリストですし、向井宇宙飛行士と一緒に飛んだSTS-65のスペースラブミッションIML-2では数々の科学実験をこなし、さらにISS第10次滞在クルーのコマンダーを務めるなど、宇宙飛行士として本当に素晴らしい活躍を見せてくれました。宇宙飛行に向けた訓練やNASA宇宙飛行士室での業務を通して、チャオさんからはさまざまなことを学びました。彼は優れたリーダーであると共に、素晴らしい仲間であり、いつもユーモアに溢れ、一緒に仕事をするのがとても楽しくなる魅力を持っている人です。チャオさんは、これからも世界の有人宇宙開発においてさらに大きな貢献をしてくれることでしょう。
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