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「ホーキング博士、遥かな時空に思いをはせて」
スティーヴン・ホーキング ケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授
宇宙論の先端を行く世界的研究者であり、それを一般向けにわかりやすく伝えることにも精力を注ぐ、ホーキング博士。世界的に宇宙論ブームを巻き起こした著作「ホーキング、宇宙を語る」からおよそ20年の歳月を経て、さらに簡潔に宇宙の謎を綴った「ホーキング、宇宙のすべてを語る」が日本でも刊行されました。 現在は、観測技術の進歩によって、宇宙に関する理論の検証が大きく進んでいます。実証と実践で宇宙に挑戦するJAXAと、イマジネーションと理論で宇宙の謎に迫るホーキング博士。アプローチの仕方は違っても、宇宙にかける強い思いに変わりはありません。JAXAの平林久教授(電波天文学)が、ホーキング博士にインタビューし、偉大なるホーキング博士の素顔に触れました。
Stephen William Hawking スティーヴン・ウィリアム・ホーキング ガリレオの死から300年後の1942年1月8日にオックスフォードで生まれる。 57年、オックスフォード大学付属のユニバーシティ・カレッジに進学。オックスフォード大学、ケンブリッジ大学大学院で物理学と宇宙論を専攻する。74年、32歳のときに史上最年少でイギリス王立協会会員となる。79年からケンブリッジ大学ルーカス記念講座教授となり、現在に至る。12の名誉学位を持つ。 大学院在学中に、筋萎縮性側索硬化症であることが判明。車椅子での生活となる。85年に肺炎で気管切開の手術を受けたあと話をすることができなくなり、以後は、コンピュータを介して会話する。障害を抱えながら、「ブラックホールの蒸発理論」や相対性理論に量子論を取り入れた「無境界仮説」を提唱するなど、アインシュタイン以後の宇宙論に大きな影響を与えた世界的な理論物理学者である。

発見するスリル
——博士が、理論物理学や宇宙論の道を選んだ理由を教えてください。

「なぜ人類が、ここ(地球)に存在するのか」という壮大な疑問に対する答えを見つけたかったからです。「私たちはどこからやってきたのか?」。若い人たちにもこの疑問の答えを追求してほしいものです。“誰も知らなかったものを発見するスリル”に勝るものはありませんからね。


——現在は、どんなことに取り組んでいらっしゃるのですか。

今は、ブラックホール、そして、初期の宇宙がどのような過程を経て現在の姿になったのかということを研究しています。
また、特に「どのようにして宇宙がゼロから自然発生的に作り出されたのか」ということと、「どのように情報がブラックホールから出て行くのか」というテーマに力を入れています。


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——日本のX線天文衛星「あすか」などのデータはご覧になったことはありますか? また、日本のX線天文学や宇宙開発には、どのような印象や期待を持たれていますか?

日本のものを含め、X線衛星のデータは、ブラックホールの発見に大変役立っています。ブラックホールそのものがX線を放出するわけではないのですが、周りを取り巻く円盤状のガスがらせんを描きながらブラックホールに吸い込まれる時に、非常に高温になりX線を放射するのです。このX線を観測することで、大きさ数キロのものから何百万キロのものまで、多数のブラックホールを観測してきました。日本には、長年にわたる理論天文学の素晴らしい伝統があります。観測天文学、X線天文学がそれに続き、現在では非常に活発なものとなっていますね。


X線天文衛星「あすか」 あすかSISによる銀河中心のイメージ 写真 X線天文衛星「あすか」(左)
あすかSISによる銀河中心のイメージ(右)。この中心には、超巨大ブラックホールがあると考えられている
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