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宇宙の謎の最前線
——現代物理学でいまだ解き明かされていない最大の問題とは何ですか?

M理論が宇宙の究極的な理論だと考えていますが、まだ断片的な理解をしているに過ぎません。ジグソーパズルで言えば、端は埋めてしまったものの、まだ真ん中にぽっかりと穴が開いているといった状態です。もちろん、全体像を誤って捉えてしまっていることに気付く可能性もあります。予期せぬことも起こりますからね。


※M理論とは
森羅万象を1つの理論で説明する「完全な統一理論」である可能性が、現在、最も高いと考えられている物理学の理論。宇宙に存在する4種類の力(重力、電磁力、弱い核力、強い核力)の関係を解き明かす。

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——20世紀に解明されないまま21世紀にもちこされた宇宙の大きな謎には、「重力だけをおよぼしながら目には見えない暗黒物質」や「宇宙の加速膨張を起こす暗黒エネルギー」などがありますが、今後どのようにこの謎が解き明かされると思われますか。

私たちや恒星を形成する普通の物質というのは、宇宙の質量のわずか5パーセントにすぎません。そして、その他の25パーセントを目には見えない暗黒物質が占めていて、その存在は重力を観測して検出することが可能です。残りの70パーセントは、いわゆる暗黒エネルギーとして存在しています。このエネルギーは、普通の物質や暗黒物質のように宇宙の膨張を減速させるのではなく、加速させる性質を持った謎のエネルギーです。暗黒物質なら、運に恵まれれば、相互作用をする何らかの弱い粒子であることを確認できると思いますが、暗黒エネルギーを確認するのは、さらに困難です。ゆっくりと崩壊する場(フィールド)の可能性もあるのですが、私はむしろ、いわゆる真空エネルギーではないかと思っています。もっと正確な測定ができるようになれば、こういった可能性を吟味することができるかもしれません。 ダークマター 写真
X線天文衛星「あすか」が観測したダークマター

——「ホーキング、宇宙のすべてを語る」でも議論されている「ひも理論」、あるいはその発展型の「M理論」が正しいと証明されたならば、私たちの生活にどんな影響をもたらすでしょうか。

私たちは、宇宙の起源のような特に極端な状態を除けば、宇宙を支配している法則についてすでに知っています。ひも理論を理解すれば、宇宙の起源についてわかるようになるでしょう。生活自体に大きな影響を与えることはないでしょうが、自らの起源を理解することや、宇宙探査によってどんな発見が期待できるのかを理解することは重要なことです。


※ひも理論とは
超ひも理論ともいう。粒子が点ではなく、ひもの上の波だとする理論。1960年代後半に作られて1984年以降脚光を浴び、「完全な統一理論」と期待されたが、現在は、5種類のひも理論を包括するM理論が統一理論の候補となっている。

宇宙には、電磁波によっては観測されない“何か”が、大量にあるようだ。強い重力を及ぼしている“何か”を暗黒物質(ダークマター)と呼んでいるが、その正体は不明。また、加速膨張する宇宙のエネルギー源だと考えられている“何か”は、暗黒エネルギー(ダークエネルギー)と呼ばれている。この正体も、まったくの謎である。 イラスト/平林久

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