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まだ気持ちの高ぶりが収まらずに興奮しています。やっと地に足が着き始めたといった感じです。私は、「スターダスト」プロジェクトのメンバーを、言葉では表現できないくらい非常に誇りに思います。
「スターダスト」には明確な科学的目標がありました。第1は、ビルト2彗星に接近飛行することです。これは彗星表面から粒子が舞い上がるという非常に厳しい環境を克服し、彗星の核から出た物質という太陽系の歴史的情報を含んだサンプルを採取することに成功しました。第2の目標は、サンプルが入ったカプセルを地球に帰還させ無事に軟着陸させることでしたが、こちらも成功しました。いずれも予想以上にすべてがうまく機能し、素晴らしい結果となりました。回収されたサンプルは、約45億年前に太陽系が誕生した時代にまでさかのぼることができる貴重な宝物と言えるでしょう。回収されたカプセルの中に、何十万という彗星の粒子を確認しました。現在、NASAのジョンソン宇宙センターで分析が進められていますが、今後、特定の粒子を選択し、それを世界中の科学者に送り、何十年にもわたって研究を行う予定です。今後どんな発見があるのか非常に楽しみです。
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私たちがビルト2彗星を選んだのではなく、ビルト2彗星が私たちを選んだのだと思います。
1970年代初めまで、ビルト2彗星は天王星の軌道に近いところを回っていて、ほとんど太陽光にさらされませんでした。そのため太陽系誕生当時の物質がそのまま保存されていると考えられています。1974年に木星に接近したことで、木星の重力の影響を受けて軌道が変わり、現在の火星軌道になりました。火星軌道であれば、比較的容易に探査機を到達させることは可能です。探査機が彗星に接近するために、火星の軌道に到達するのは簡単でしたが、もしも木星の軌道を超えなければならなかったとしたら、とても大規模なミッションになってしまい、さらにサンプルを回収することはとても難しく不可能だったかもしれません。ですから太陽系がこの手つかずの彗星を私たちに届けてくれたのです。 |
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ビルト2彗星の核の画像には本当に驚きました。これまで惑星や彗星など数々の天体の写真を見てきましたが、ビルト2彗星の核はこれまで見たものとはまったく違いました。表面が非常にごつごつしていて、何百メートルも突き出した山脈があり、表面には塵がありませんでした。ほとんどの天体には塵があって、それが表面の鋭さを隠しますが、ビルト2彗星は違いました。これまでの、汚れた氷玉という彗星のイメージとは違って、とても深いクレーターや険しい崖を目にすることができたのです。このような表面の画像を見たのは初めてで、とても興奮したのを覚えています。 |
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ユタ州の砂漠に着地した彗星の塵を収めた回収カプセル(提供:NASA)
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カプセル回収後に暫定クリーンルームに運び込まれたカプセル(提供:NASA)
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スターダストが撮影したビルト2彗星(提供:NASA) |
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