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Q.NASAの惑星探査計画における「スターダスト」ミッションの意義は何でしょうか?
NASA が1990年代におこなったディスカバリー計画は、「開発期間は短く、そして質は高く、より安く(faster, better, cheaper)」を目指してきましたが、「スターダスト」はまさにこのディスカバリー計画の精神を反映するものでした。この目標を実行に移しつつ、ミッションを成功させることはとても困難なことでしたが、「スターダスト」においては、この環境下でうまく機能したといえるでしょう。このことはとても重要です。
次に、アメリカではアポロ計画以来約30年ぶりとなるサンプルリターンミッションだったことです。長いブランクの後に、無事サンプルを回収することができました。サンプルの粒子は凍結状態で太陽系の外縁に封じ込められていましたから、太陽系が形成されて以来変わっていない状態のまま保存されていると考えられています。その粒子を手にすれば、45億年の時をさかのぼり、太陽、惑星、そして私たちの構成要素を目の当たりにすることができるのです。

Q.低コストを目標にしたNASAのディスカバリー計画についてどう思われますか?
「スターダスト」の他にも、月探査機「ルナ・プロスペクター」、火星探査機「パスファインダー」、小惑星探査機「ニア・シューメーカー」など、科学的に素晴らしい成果を残すことができたミッションはあります。しかし、低コストで押さえながら、さらに高いレベルを追求するのには限界がありました。ミッションに対する目標が高くなればなるほど、「今の枠組みでは、これ以上目標を高く設定すればうまくいかない」というギリギリのところまで達してしまったのです。それによって失敗に終わってしまったミッションもありました。その結果、NASAは「開発期間は短く、そして質は高く、より安く」という考えを見直し、今はもっと現実的な見解を持つようになってきました。私たちはこれまでの経験を活かしつつ、今後も成功の記録を続けていきたいと思います。
Q.博士は、1980年代後半に行われたロシアの火星探査機「フォボス」ミッションにも関係されていましたが、ロシアの技術についてどう思われますか?今後、ロシアとの国際協力の計画はありますか?
私はロシアの「フォボス」ミッションに参加するために、1980年代に旧ソ連に行きました。それは「スターダスト」で経験したものと同様に、とても胸躍るものでした。既に20年が経過していますから、当時と今の技術を比較することはできませんが、旧ソ連は1980年代に火星に6トンもの探査機を送ることができる技術を持っていました。現在私たちの火星探査機は1トンから2トンですから、旧ソ連の技術がかなり高いものだったことが分かるでしょう。私は、このような高い技術をもった宇宙機関と作業ができることに興奮しました。
ヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」(提供:ESA)
ロシアの火星ミッションは1996年に廃止になってしまいましたが、「フォボス」ミッションに携わっていたロシアとアメリカの科学者は、現在ヨーロッパの火星探査機「マーズ・エクスプレス」ミッションで共同作業をおこなっています。「マーズ・エクスプレス」は2003年の12月に火星に到着し、オービター(周回機)が現在、火星を観測中です。このようにアメリカは、ヨーロッパと国際協力をおこなっています。また、2009年にロシアが計画している「フォボス」ミッションの復活にも協力できればと思います。ロシアは、サンプルリターンを希望しています。私を含めた多くのアメリカとヨーロッパの科学者が、2009年にひとつのチームとして再び作業することができればいいと思います。

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