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安全安心な社会の実現に向けて

Q.理事長が力を入れていらっしゃる、宇宙を利用した「安全で安心できる社会」の実現に向けて、陸域観測技術衛星「だいち」を中心にかなり進展があったと思いますがいかがでしょうか?


陸域観測技術衛星「だいち」

これからの宇宙利用の最大の目的は、「安全安心な社会」の実現に貢献しようということです。その第一が、「だいち」です。「だいち」は地図を作成するのが目的ですが、それは、地球観測をするということでもあります。したがって、災害が発生した状況も把握できるというわけです。JAXAは、2005年に「国際災害チャータ」の一員となり、「だいち」が撮った画像は全世界に提供されています。「だいち」の画像が、災害地域の対策を立てるのに貢献したということで、「安全安心の社会」を実現するための第一段階をスタートしたといえるでしょう。今後もいろいろな衛星を打ち上げることによって、ますます「安全安心な社会」の実現に貢献していきたいと思います。
また、災害対策は単に衛星だけではなく、地上とも一体になって連携して行うべきだと思います。衛星を使った災害対策について話し合う場が関係省庁にできて、いろいろなニーズのヒヤリングも行い、次の衛星はどのようにしたらいいかという議論が深まってきました。宇宙開発委員会でも次期災害対策の衛星群として4機くらいの衛星を想定して、常時地球を観測できるようにしようという気運が出てきたところです。こういった防災や減災の取り組みは、JAXAだけでなく、国や自治体、企業などでも本格化しています。昨年には、民間の有識者が集まって、災害低減戦略(DiMS)フォーラムが立ち上がりました。災害での被害を軽減するための戦略的フォーラムで、日本のみならずアジアも含めて災害に素早く対応できるよう、政府や関係省庁、自治体にいろいろ提言をしていこうというものです。宇宙機関だけでなく産学官をあげて、災害に対する本格的な取り組みが動き出したといえるでしょう。


Q.昨年は国際協力についてはいかがでしたか?

まず、「だいち」による国際協力が、「センチネル・アジア(Sentinel Asia/アジアの監視員)」というアジア太平洋域の防災管理を目的とした衛星データ利用ネットワークの構築によって実現しました。これは災害の多いアジア地域を中心として、地球観測衛星の画像などの災害関連情報をインターネット上で共有する活動で、APRSAF(アジア太平洋地域宇宙機関会議)加盟の宇宙機関や、アジアの防災機関などが協力して推進しています。昨年は2度のプロジェクトチーム会議を開き、19の関係国が参加して、衛星からの情報を具体的にどう使うかなどを議論しました。これまでにも宇宙科学の分野では国際共同プロジェクトを積極的に進めてきましたが、今年は国際宇宙ステーションの日本の実験棟が打ち上がるということで、ますます国際協調が実を結ぶ時代になるのではないかと思います。


Q.昨年を振り返って、改善すべき点はどんなところでしょうか?


2006年12月に打ち上げられた
H-IIAロケット11号機

昨年6機の打ち上げを成功させて、その結果何が起きたかといいますと、次に打ち上げる衛星が足りなくなってきたという問題です。これは、衛星を開発するのに長い時間を要するということに起因します。次に打ち上げる衛星がなくなりそうだからといって開発に着手しても間に合わないのです。ですから1つの対応策として、もう少し衛星の開発期間を短縮できないかということが挙げられます。
2つ目の改善点は、衛星打ち上げに関わる費用の削減です。ロケットの打ち上げには100億円、衛星の開発には数百億円かかるという世界ですが、こんなに高いと、いくら衛星をたくさん打ち上げたくても予算的に無理ということになります。実用化のためにはリーズナブルな値段でなければなりません。そういう意味では、日本はすでに50年も宇宙開発をやってきたわけですから、その蓄積された経験をもとに、もう少しコスト意識を持つ必要があると思います。

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