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2007年、さらなる信頼性の向上と新たな挑戦へ

Q.2007年の主要ミッションについてお聞かせください。


月周回衛星「セレーネ」


超高速インターネット衛星「WINDS」


国際宇宙ステーション


日本の実験棟「きぼう」


JAXAの宇宙飛行士

日本での打ち上げは2機を予定しています。今年は、月探査のスタートの年にしようということで、夏に月周回衛星「セレーネ」を打ち上げます。月をじっくり観測する、アポロ計画以来最大規模の月探査として世界的にも注目されています。アメリカが有人月探査計画を発表したり、中国やインドなどが月探査計画を進めていたりと、今、世界で月が話題になっています。何のために月を調べるかというと、将来的に人間が滞在できる月面基地を作れないかということを模索しているわけで、実現には20年くらいかかるかもしれませんが、ぜひ国際協調によって実現したいと思います。その一員として日本が参画することに意義があります。「セレーネ」はその第一段階といえるでしょう。
もう1つは、今年度末の予定で、超高速インターネット衛星「WINDS」を打ち上げます。これは通信衛星の実験衛星ですが、特にインターネット社会において、従来に比べて高速な通信が可能になるのが特長です。
この他に今年の最大のイベントは、いよいよ日本の実験棟「きぼう」が打ち上げられて国際宇宙ステーションにドッキングすることです。今年度に2回、来年度に1回の計3回に分けて打ち上げられ、日本の実験室が完成します。待ちに待った宇宙での科学実験がようやくスタートできるのです。最初に「きぼう」が打ち上げられる時には土井宇宙飛行士が飛びますし、さらに実験棟が完成すると、日本人が長期滞在することになります。現在、長期滞在に向けて、若田、野口宇宙飛行士をはじめとした日本の宇宙飛行士が訓練を受けています。


Q.その他に、今年理事長が力を入れていきたい分野は、どのようなことでしょうか?

宇宙開発ではやはり信頼性が基本的な問題ですから、この信頼性回復については引き続き重点を置いていきたいと思っています。しかしそれだけでなく、もっと基礎的な部分といいますか、単にロケットや衛星だけでなく、その基本となる部品や構成要素にもう少し日を当てたいと思っています。なぜなら、世界でロケットや衛星をたくさん作っていますが、その部品を作っている会社はある程度限定されてしまうからです。残念ながら、日本のメーカーだけではすべての部品を供給できない状況になっています。それでは、日本が打ち上げる衛星を必要な時にぱっと作るというわけにいかないという問題が起こりますので、この点を少し強化できたらと思います。
また、宇宙で活躍するロボットの開発を進めたいと思います。日本はロボット技術が得意ですから、それを活かして、月探査や惑星探査にも使えるロボットを作れると思います。昨年、ロボットチームを発足させましたので、今年からそろそろ開発に入れるのではないかと期待しています。
昨年は、月・惑星探査推進チームも発足しました。そのチームが、月探査と、「はやぶさ」の後継機である小惑星探査機「はやぶさ2」を検討しています。今年は、どういった衛星を作ったらいいかという研究に着手したいと思います。
一方、航空分野では、超音速機を次のターゲットとし、静粛超音速という、音が小さくて静かな超音速機を開発します。この基本計画の策定作業を昨年行いましたので、今年はそれを正当化させ、開発のための実験を着実に進めていきたいと思います。これもおそらく国際協調でしか実現できないでしょう。日本が強みとするところを作って、国際協調の中で超音速機の開発に貢献できればと思います。


Q.宇宙は子供たちの教育に非常に大きな役割を果たせることが、いろいろな機会に実証されつつあるようですが、この点はどのように今後取り組まれますか?

一昨年、JAXAは宇宙教育センターを作りました。自らも子供たちに教育しますが、先生たちの研修を行って、学校の授業に宇宙のことを取り入れてもらおうと取り組んでいます。そのための教材を用意する活動もしてきたわけですが、1年間ですべての生徒を教えることはできないので限界があります。ですから、宇宙教育に関心を持っていただく先生を増やさないといけません。今年は先生たちの研修の場を増やしていきたいと思います。
しかしそれだけでは、なかなか宇宙ファンは増えないため、他にもいろいろ考えています。1つは、既存の宇宙少年団をJAXAでサポートして、全国で4000人近くいる団員をもっと増やし、全国的に拡大できないかということです。2つ目は、自分では直接行動をしないけども、宇宙に関心があって、情報を得たいという人を集めて、宇宙ファンクラブを作ろうと計画しています。インターネット上で情報配信ができますし、場合によっては、質問も受けつけることができるでしょう。このようにして日本で宇宙に対するファンを増やすと、ひいては良い人材が宇宙開発に従事することになるのではないでしょうか。あるいは、最近は理科離れと言われていますが、理科に関心を持つ人が増えてくれたらいいなと思います。この宇宙ファンクラブは今年の春頃に発足する予定でいますので、楽しみにしていてください。


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