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Q.4 「すだれコリメーター」にはじまり現在まで発展してきた日本のX線天文学ですが、今後日本のX線天文学にどのようなことを期待されますか?

 第一人者である小田博士の遺志は後輩へと引き継がれています。田中靖郎教授はいくつかの衛星を設計し、銀河の中心からでる「長波長側に広がった鉄輝線」を発見しました。活動的な銀河の中心はおそらくブラックホールであり、物質はその中に吸い込まれていきます。ガスが吸い込まれるときX線を放射しますが、その中に鉄が含まれていた場合には鉄原子の特性X線を放ちます。その特性X線がブラックホールの強い重力で波長が伸びたように見える、というものです。
 また、日本の天文観測衛星は、小田博士が中心になって打ち上げた「はくちょう」に始まり、「てんま」「ぎんが」と続いた後、次の「あすか」で、先程お話しした「鉄原子の特性X線」を発見しました。これは非常に重要な発見で、こうした実績を日本がこれからも残していくことを期待しています。世界じゅうの研究者が、「ASTRO-EII」(2005年打上げ予定)のX線観測に大きな期待を寄せています。
日本のX線観測衛星とASTRO-EII イラスト

日本のX線観測衛星とASTRO-EII

講演会会場の案内看板写真



 日本の天文学は、1980年代と'90年代に特に大きな役割を果たしたと思います。これはアメリカがアインシュタイン衛星からチャンドラ衛星までの20年にわたり、最高レベルの衛星を持てなかったためです。この間、日本と欧州がX線天文学を発展させてきたのだと私は考えます。当然のことながら、私たちが日本に期待することは、こういった実績を継続してほしいということです。日本にはX線天文学の将来計画があることも承知しています。
 また日本には、充実したX線天文学の研究グループがありますが、これも継続していってほしいところです。これは非常に明るい話題の一つであり、日本の科学への貢献の中でとても重要なものだと思っています。
 現在ではご存知のとおり素粒子物理学とX線天文学が、超新星の観測などの分野で相互作用しあっています。特に小柴博士と私はノーベル賞を分かち合いました。小柴博士がニュートリノで、私がX線で天体現象の発見を行っていたわけです。
 私は日本のX線天文学研究グループが今後も高いレベルで続いていくことを強く期待します。そうでなければ、日本にとっての大きな損失となることでそしょう。


[インタビュー収録:2004.2.27]

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