超新星爆発から約330年経った超新星残骸「カシオペア座A」のX線画像。X線のエネルギーが高い順に青、緑、赤で示す。(提供:NASA/CXC/UMass Amherst/M.D.Stage et al.)
ティコの超新星残骸のX線画像。 外縁に見える紫色の領域は衝撃波で、ここで高いエネルギーの非熱的粒子が加速されている。(提供: NASA/CXC/Rutgers/J. Warren & J. Hughes et al.)
超新星爆発によってできた粒子が、ものすごく高いエネルギーまで加速していることに興味を持ちました。私はエネルギーの高い現象に惹かれるんです。また、地上にあるもの全てに温度がありますが、超新星残骸には温度がない粒子がある。地上で全く見られない現象というのが、超新星爆発やその残骸の面白いところです。その非熱的な現象は偶然見られるのではなく、普遍的に宇宙のあらゆるところで見えていますので、何か非常に重要なことが隠されている可能性が高いと思います。それも魅力的です。
そして、超新星残骸の写真を見ると、とても綺麗で美しいというのも、私が興味を持った理由の1つですね。
超新星爆発は、星が最期を迎えて爆発する現象です。例として重い星を考えましょう。重いというのは、太陽の10倍以上の質量です。まず星は、宇宙空間にあるガスの雲が重力により引き寄せられ収縮してできます。そして星の中心では、水素ガスが燃焼してヘリウムに変わる核融合が起き、外向きの圧力が生まれます。その圧力と星の重力が釣り合っているからこそ、星はその形を保つことができます。また、星が輝くのも核融合反応によるものです。
やがて核融合は星の「芯」で鉄を合成するに至ります。ところが鉄より安定な原子核がないため、それ以上の核融合は起こりえず、誕生から100万年ほど経つと“鉄の光分解”という破滅が訪れます。「芯」の圧力は急激に低下し、重力に耐えられなくなった星は一気にガシャッと潰れ、その反動で大爆発を起こします。これが重い星の超新星爆発です。
超新星爆発の時にはものすごく大きなエネルギーが解放され、衝撃波が宇宙空間に広がります。超新星の爆発1回で、星が1000億個集まったほどの明るさで光ります。また、衝撃波からはX線やそれよりも高いエネルギーのガンマ線が放射されます。このような、星の大爆発によって生じる衝撃波を、超新星残骸と言います。超新星の爆発自体はほんの数秒ですが、超新星残骸は10万年以上、宇宙空間に存在します。