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小惑星イトカワの素顔に迫る-「はやぶさ」科学的観測の成果-
2003年5月9日に打ち上げられた小惑星探査機「はやぶさ」は、イオンエンジンによる惑星間航行や地球スイングバイ、自律航行に成功し、2005年9月12日、約20億kmを旅した後、小惑星イトカワに到着しました。それ以来、「はやぶさ」はさまざまな位置・角度からイトカワの科学観測を行ってきました。イトカワの素顔とはいったいどういうものだったのか。11月1日の記者会見の内容を、科学的観測を統括している宇宙科学研究本部 固体惑星科学研究系 藤原顕教授のインタビューと合わせてお伝えします。
イトカワはきわめて多様な地形をしていた!

イトカワ 写真
小惑星イトカワ。イトカワの大きさは
540m×270m×210m
イトカワから約8kmの距離で撮影

イトカワ 写真
イトカワ最大級の岩塊で長さが約50m
イトカワから約4.5km の距離で撮影

イトカワ 写真
割れ目がある岩塊
イトカワから4kmの距離で撮影

イトカワ 写真
色彩を強調したカラー画像
「特徴ある形」と「表面の極端な二分性」
イトカワは2つの大きな塊がくっついたような形をしています。その表面は、レゴリス(表面の砂か“れき”の層)が堆積する滑らかな地域と、岩塊が非常に多い凸凹した地域に分けられます。レゴリスに覆われていない裸の小惑星の姿が観測されたのは史上初めてのことです。



非常に多い岩塊
広い範囲にたくさんの岩塊があり、最大級になると長さは約50メートルにもなります。
通常、岩塊は表面にクレーターが生成されるときの破片だと考えられており、クレーターの大きさとそのクレーターから放出される最大破片の大きさには経験的な法則があります。それによると、50メートルというこの最大級の岩塊は、イトカワにある一番大きなクレーターでも生み出せないほど大きいことが分かりました。これは、イトカワの形成の過程を知る重要な手がかりとなります。おそらく、イトカワよりも大きなもともとの天体(母天体)があって、それが破壊された時に出た破片がイトカワになり、同時に出たより細かい破片がその上にふり積もったものと考えられます。
また、大きな割れ目が走っている岩塊も発見されています。このような割れ目がどのようにしてできたのか、その過程を探るのも今後の研究課題です。



低重力下にあるレゴリス
イトカワの南極から北極にかけての滑らかな地域のレゴリスは、表面の重力の勾配に応じて集まってきたのではないかと考えられています。レゴリスの空間分布や粒子サイズの分布、岩塊やクレーターの空間分布やサイズ分布についても解析が進められ、これらの結果はイトカワが受けた衝突の歴史、さらには小惑星や太陽系の進化を探る手がかりとなります。



地球の岩石より密度が低い
イトカワの推定密度は、地球上の普通の岩石よりやや小さいことが分かりました。このことは、今まで考えられてきたよりも大きな内部のすき間(空隙)が存在する可能性を示します。岩石そのものの中に空隙があるためなのか、それとも岩石の積み重なりによる空隙によるものかは分かりませんが、サンプルを回収できれば空隙の本質がより明らかになり、小惑星の構造、さらには隕石や地球そのものの理解へとつながるでしょう。



場所によって表面の色が違う
イトカワの表面の色彩を強調したカラー画像上で、場所によって色合いが多少違う場所があります。これが、物質の違いを反映しているのか、宇宙風化(宇宙塵の衝突などによって、惑星表面の反射率が低下し、赤みを帯びる現象)を示しているのか、解析が進められています。

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