ご覧いただいているページに掲載されている情報は、過去のものであり、最新のものとは異なる場合があります。
掲載年についてはインタビュー 一覧特集 一覧にてご確認いただけます。


いよいよ始まる「きぼう」日本実験棟の組立て
新しいチャレンジに挑む JAXA 宇宙飛行士 土井隆雄
「きぼう」日本実験棟 打ち上げへ

「きぼう」船内保管室
「きぼう」船内保管室

Q.土井宇宙飛行士は、2008年に予定されている1 J/Aミッション(STS-123ミッション)で宇宙飛行を行いますが、このミッションの目的は何でしょうか?

「きぼう」日本実験棟は、宇宙飛行士が滞在して実験を行う「船内実験室」、宇宙空間で実験が行える「船外実験プラットフォームと船外パレット」、実験装置や実験材料などを保管するための「船内保管室」、保全作業支援に使用する船内実験室の外側に取り付けられるロボットアームで構成されています。これらのモジュールは、スペースシャトルで3回に分けて打ち上げられ、国際宇宙ステーション(ISS)に取り付けられます。私が搭乗する1 J/Aミッションは、その第1回目のミッションで、「きぼう」の船内保管室をISSに取り付けることが大きな目的です。日本製の保管室の扉が宇宙で初めて開かれ、その中で乗組員が仕事をすることになります。「きぼう」組立ミッションがいよいよ始まります。
さらに、2001年にISSに取り付けられたカナダ製ロボットアーム(SSRMS)と組み合わせて使うSPDM(カナダ特殊目的ロボットアーム)という小型のロボットアームを輸送し、ISSに取り付けます。小型といっても乗用車1台分ほどの大きさがあり、船外活動による組立て、取り付けは大変難しい作業です。また、STS-118(2007年8月)で、ISSからスペースシャトルへ電力を供給する装置、SSPTS(Station-Shuttle Power Transfer System)が初めて稼働され、それによってISSとスペースシャトルが長期間ドッキングできるようになりました。私たちのフライトは16日間ですが、そのうちの10日間ISSとドッキングする予定です。これまでで最も長くISSとドッキングするミッションになります。

国際宇宙ステーションとドッキングしたスペースシャトル(提供:NASA)
国際宇宙ステーションとドッキングしたスペースシャトル(提供:NASA)
Q.「きぼう」の第1回目組立ミッション、1 J/Aでの土井宇宙飛行士の役割は何ですか? 1997年に搭乗したSTS-87ミッションとはどのように違いますか?

私の第一の任務は、スペースシャトルのロボットアームを使って、「きぼう」の船内保管室をISSに取り付けることです。前回のミッションでは、ISSの組立てに用いる機器や作業手順の検証試験が主な目的でしたが、今回は実際にISSを組立てます。1 J/Aミッションでは4回の船外活動が予定されていますが、ロボットアームで宇宙飛行士を直接サポートする以外にも、さまざまな形で船外活動をサポートする予定です。また、ISSとスペースシャトルがドッキングを行う時に、コマンダーとパイロットをサポートします。ロボットアームの操作も、ドッキングも初めてのことで、私にとって新しいチャレンジです。

OBSS:センサ付き検査用延長ブーム(提供:NEPTEC)
OBSS:センサ付き検査用延長ブーム(提供:NEPTEC)

Q.ロボットアームの操作には高い技術が求められますが、どのような訓練をなさっていますか?

シミュレータを使ったロボットアームの訓練に多くの時間を費やしています。ロボットアームは、「きぼう」の船内保管室の取り付けだけでなく、スペースシャトルの耐熱タイルや翼前面にある強化炭素複合材に損傷がないかを検査するのにも使われます。ロボットアームの先端にOBSS(Orbiter Boom Sensor System)というセンサ付き検査用延長ブームを取り付けて外観検査をしますが、そのための訓練も行っています。さらに、船外活動をサポートするための、バーチャルリアリティを用いた訓練も行っています。

建設中の国際宇宙ステーション(提供:NASA)
建設中の国際宇宙ステーション(提供:NASA)
Q.土井宇宙飛行士から見た、ISSの魅力とは何でしょうか?

ISSは恒久的な宇宙施設で、常時人間が滞在でき、そこで仕事をすることができるというのが、とても大きなメリットです。長期的な宇宙実験ができたり、宇宙空間が人体に与える影響なども調べることができます。それらは、月・惑星間へ有人飛行するための、重要な生化学的なデータになるだけでなく、地上での医学活動にも貢献できるものと期待しています。例えば、宇宙では、骨のカルシウム流出や放射線などの問題がありますが、これらを解決することが、地上での医学の進歩につながると思います。このような科学技術的な利用以外にも、STS-118でバーバラ・モーガン宇宙飛行士が行った宇宙授業のように、ISSでは教育的・文化的な活動も行うことができます。これもISSの魅力の1つです。
また、「きぼう」日本実験棟がISSに取り付けられ、宇宙からさまざまな情報を得ることができるようになれば、日本人にとっても非常に有効的です。これまでは、数年に一度、日本人が宇宙へ行った時だけ、宇宙での有人活動がニュースに取り上げられてきました。しかし、「きぼう」が打ち上がると、宇宙からのニュースを毎日伝えることができるでしょう。日本人にとって、宇宙がより身近に感じられるようになるというのは、やはり、大きな魅力だと思います。

「きぼう」船外実験プラットフォーム
「きぼう」船外実験プラットフォーム

Q.土井宇宙飛行士は、どのような宇宙実験に興味をお持ちですか?

流体力学を学んでいたことがありますので、「きぼう」の船内実験室で行われる流体実験に興味を持っています。宇宙空間と地上では環境が異なりますので、宇宙特有の流体現象を見たいと思います。表面張力によって発生する現象が分かると、宇宙で新しい材料を作る上で大きな知見が得られるのではないかと期待しています。
また、「きぼう」には、実験装置を宇宙ステーションの外に出して、宇宙空間に直にさらして実験することができる「船外実験プラットフォーム」があります。この施設を使えば、高真空の宇宙環境を利用した実験や宇宙技術開発、地球観測、天文観測など、これまで行われていない新しい実験をすることができます。ISSには、アメリカ、ヨーロッパなどいくつかの実験棟がありますが、船外で実験が行えるのは、日本の実験棟のみです。そのため世界的にも注目されています。私は天文物理学を専攻していましたので、特に宇宙からの天文観測に興味があります。今回のフライトでは、アマチュア天文家として、ISSから星の写真を撮ったり、太陽の観測をしてみたいと思います。

  
1   2
Next