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日米宇宙探査シンポジウム
講演1
「はやぶさ探査の主な結果」
			川口淳一郎
			JAXA宇宙科学研究本部 宇宙航行システム研究系
まず最初に、惑星探査の最近のハイライトをご紹介したいと思います。(※図1)
ヨーロッパの「マーズ・エクスプレス」は2003年12月に火星に到達し、現在はオービター(周回機)が火星軌道を周回し、火星表面の素晴らしい写真を撮っています。
ちょうど同じ頃、2004年1月に火星に到達したのが、アメリカのマーズ・エクスプロレーション・ローバー(MER: Mars Exploration Rover)の2機のローバー、「スピリット」と「オポチュニティー」です。ローバーの設計寿命は数ヶ月でしたが、驚くことに今でも観測を続け、素晴らしい写真を送ってきています。そして、火星にはかつて非常に多くの水があったという証拠がみつけました。火星のさまざまな地域を探査し、過去の生命体、あるいは今日の生命体を探る目的で探査が続いています。
ヨーロッパの小型探査機「ホイヘンス」は、アメリカの土星探査機カッシーニから切り離され、2005年1月に土星の衛星タイタンに着陸しました。タイタンには液体のメタンがあり、そのメタンの下に氷があるのではと考えられています。
彗星探査機「ディープインパクト」はアメリカの探査機で、2005年7月にテンペル第1彗星に衝突体(インパクター)を衝突させ、彗星の塵を採取して成分を調べたり、彗星内部の構造を調べました。
また、これは探査機ではありませんが、2005年8月に、太陽系第 10惑星の可能性がある天体を発見したと発表されました。2003 UB313という符号がつけられたこの天体は、アメリカのパロマー山天文台の望遠鏡で撮影されました。冥王星よりも大きいため、第10惑星の可能性もありますが、カイパーベルト天体で、惑星ではないという考えもあります。

こちらは、土星探査機「カッシーニ」が撮影した土星の衛星エンケラドスです。(※図2)衛星の表面に液体の水が存在し、それが間欠泉のように吹き出していると、2006年3月に発表されました。この小さい衛星に水がどのように存在しているのか? どのようにしてそこに残っているのか? 内部でいったい何が起こっているのか? こういった疑問の答えはまだ出ていませんが、それを解き明かすには多くの理論が必要です。

火星探査機「スピリット」は、2006年2月にグセフクレーターの「ホームプレート」と呼ばれる場所を撮影しました。(※図3)層状の地形は水の浸食によってできたと考えられています。複雑な層のパターンがどのような状況でできたのかを探るため、探査チームが研究を行っています。

以上のように、私たちは太陽系の水、生命体の可能性を探しています。火星や土星の衛星エンケラドス以外にも、木星のガリレオ衛星、イオ、エウロパ、ガニメデ、ガリレオなど、水がある可能性は他にもあります。(※図4)しかし、まだ生命体の発見に至っていないということも、お伝えしなければなりません。

太陽系探査の歴史についてお話しましょう。非常に多くの探査機があります。(※図5)
水星には1974年に「マリナー10号」が到達し、現在は「メッセンジャー」が向かっています。金星はアメリカと旧ソ連の探査機が何度も行き、金星表面をレーダーマッピングして、地形図を作りました。火星についても、アメリカと旧ソ連の探査機が数多く行き、最近ではヨーロッパも「マーズ・エクスプレス」を火星に到達させました。木星で代表的なのは「ガリレオ」、土星では「カッシーニ・ホイヘンス」、そして1977年に打ち上げられた「ボイジャー」は、木星、土星、天王星、海王星への素晴らしいミッションを終え、現在も宇宙探査を続けています。また、彗星や小惑星の探査では、「さきがけ」「すいせい」そして「はやぶさ」という日本のものもあります。
このように、たくさんの探査機が宇宙探査を行ってきました。冥王星にだけはまだ探査機が到達していませんが、現在冥王星に向かっているアメリカの「ニューホライズンズ」が到達すると、人類は太陽系の惑星をすべて探査したことになります。

月探査の歴史を振り返ってみましょう。月にはなんと94機の探査機と24人の人が行きました。(※図6) 1960年代に米ソの冷戦があったことは皆さんご存知だと思いますが、月探査機のほとんどはその時代に送られています。そして、これらのミッションを通じてさまざまな実験が行われました。地球が実際に太陽系の中で進化してきたことを、これらの探査を通じて私たちは学ぶことができたと思います。1976年の旧ソ連の「ルナ24」以降、一旦月探査は止まってしまいましたが、1990年には日本の「ひてん」、そして1994年のアメリカの「クレメンタイン」と再び月探査が行われるようになりました。

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図1



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図2



図3



図4



図5



図6




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