小谷:打ち上げ射場整備作業が始まると、打ち上げ隊が編成されます。私はロケット本体に関わるロケット班と、打ち上げに使用する設備を準備する設備班に所属しています。具体的には、打ち上げ準備作業に監督員(「JAXA Engineer」)として立ち会い、作業を監督しつつ、作業中に不具合や問題が起こったときは、技術的な要素を含めて他の作業に影響がでないよう、最善の方法で解決するといった仕事を行っています。
足立:私はプロジェクト管理と呼ばれる仕事をしています。打ち上げに向けた各作業がうまく進むよう、各関係者間の調整を行っています。また、作業や予算に合わせて作業者のスケジュールを管理するのも仕事のひとつです。打ち上げには様々な企業が携わっており、打ち上げ成功という共通の目的を達成するためには息の合ったチームワークが必要になります。すべての作業を円滑に進めるためにはプロジェクト管理は重要な仕事の一つです。
小谷:打ち上げの当日は、準備作業としてロケットの射座移動や最終準備作業を監督し、打ち上げの直前になるとHTVの空調供給設備とロケットのための冷却水、音響低減注水など水を出す設備の管理、監視が主な仕事です。
打ち上げの直前まで、HTVの入ったフェアリングに空気を供給し、常に温湿度を一定に保っています。また、打ち上げの480秒前からありとあらゆる水系の設備が動き出します。それらの設備の状況をブロックハウスという発射管制棟から監視しています。
足立:私はブロックハウスでLCDR(発射指揮者)の補助をしています。LCDRは打ち上げ直前の発射準備作業を指揮し、発射の指令を出す指揮者です。ロケットの打ち上げがスムーズに進むよう、LCDRの仕事を多方面から支援するのが私の主な仕事です。
小谷:働いていて思うのは、打ち上げにはロケット本体と同じくらい打ち上げるための設備が重要だということです。安全確実にロケットを打ち上げるための設備を保全し、打ち上げ当日に健全に動かすことも重要な宇宙開発だということです。
足立:打ち上げというとロケットが打ち上がるシーンがよく取り上げられますが、そこからは想像もできないほど沢山の人が働いています。大きく携わっている人や一部のみを担当している人など様々ですが、地道で目立たない仕事でもみんなプライドを持って真剣にやっていますよ。
小谷:どんな仕事でもそうだと思うのですが、仕事というのは楽しいことばかりではありません。大変なことも多いです。ただ、どんな仕事でも志を持って取り組んでいると、やる気が満ち溢れてきます。宇宙開発は、よく夢がある仕事だといわれますが、「仕事に夢があるわけじゃない、俺に夢があるんだ!」と、みんな変わらぬ志を持って仕事に取り組んでいることを、打ち上げを見ている皆さんにも知ってもらいたいですね。
足立:思いはいろいろあります!入社してから蓄えてきた知識を生かし、さまざまな面で関わってきたH-IIBロケットは、これまで経験したH-IIAロケットの打ち上げ以上に強い思い入れがあります。
小谷:現場では大変なことが多いです。ただ、そうやってみんなの苦労がつながっていると思うと、無事に打ち上がってほしいという思いが一番に湧きたちます。幸せを運ぶこうのとりのように、世界中の人々に夢を運んで行ってほしいです。