こうのとり2号機/H-IIBロケット2号機特設サイト

インタビュー:ネクストジェネレーション種

cover 写真左:畑井啓吾、写真右:藤井剛
H-IIBロケット2号機の打ち上げを目前に控え、種子島宇宙センターで働く若手職員へのインタービューを数回にわたってお届けします。




H-IIBロケットの打ち上げに向けてどのようなお仕事をされていますか。

畑井啓吾

藤井:私はロケット班と設備班に所属しています。ロケット班としては、ロケットの第1段機体の推進系(燃料やガス)に関わる仕事をしています。ロケットが種子島宇宙センターに運ばれてきてから、打ち上げまで、機体に問題がないかを推進系の観点から点検、監督するのが私の仕事です。また、設備班として、ロケットの燃料充填に使用する設備が、打ち上げに向けてきちんと動いているかを確認、監督しています。

畑井:私も基本的に藤井さんと同じ業務を担当していますが、機体系に関しては第2段機体の推進系を担当しています。また、設備班としてはロケットに充填する燃料やガス類の調達や、打ち上げ後に損傷した装置の再整備作業なども担当しています。

H-IIBロケット打ち上げ当日の仕事を教えてください。

藤井:大型ロケット組立棟(通称VAB)から射点までは、約500mの距離があります。その道のりを、約30分かけてロケットは移動していきます。私たちもロケットに接続された空調が過不足なく動いているかをロケットと一緒に動きながら確認します。機体の移動後は射点(ロケット発射場)とロケット発射台を接続する作業を行い、その後発射管制棟(B/H)に移動して、燃料の充填が適切に行われているか、データを見ながら確認します。また、打ち上げ前後には、決められた手順どおり設備や機体が動いているか、エンジンに問題がないかを監視します。

畑井:燃料充填が開始されるともう現場には近づけなくなるので、バルブの状態やガスの圧力の設定が適切に行われているか、多くの人が何重にも確認しています。また例えば風の強いときなどはアンビリカルホース(機体と移動発射台をつなぎ、燃料や空調を供給するためのホース)が機体から外れないか?といったことも心配する必要があります。先日行われた極低温点検の当日も風が強く、心配しながら見ていました。 

打ち上げをご覧になる方に知っておいてほしいことはありますか。

藤井:打ち上げはALL JAPAN体制です。多くのメーカーの力を結集して作っています。もちろん各メーカーの皆さんはそれぞれ打ち上げ作業に対する考え方を持っています。JAXAの仕事は、日々の打ち上げ準備作業における監督ですが、そういうメーカー皆さんそれぞれの気持ちをまとめるのも私たちの仕事です。何より「打ち上げ成功」という共通のゴールがあるからこそ、そういう違いを生かして作業を進めています。

畑井:先ほどの話で「アンビリカルホース」という言葉が出てきましたが、アンビリカルという言葉は日本語に直訳すると「へその緒」という意味なんです。まさにロケットは私たちにとって母親とへその緒で繋がった赤ちゃんのような存在で、本当に大切に扱いながら打ち上げの準備をしています。 また、忘れてほしくないのは母親側である地上設備の存在です。地上設備があってはじめてロケットは宇宙へ飛んで行けるのです。我々はロケットが種子島に搬入されるずっと前から地上設備の保全作業を行っており、万全の状態でロケットを受け入れられるようにしています。このようにロケット側・設備側ともに愛情を持って仕事をしているということを知ってほしいですね。 

藤井:確かに、ものすごく愛情を持って仕事をしていますね。設備とロケットの考え方は根本的には違っています。ロケットは一度きりに対して、設備は何度も使用するからです。でも、それらに対する気持ちは同じです。ロケットにはチリひとつでも入れない、設備にはどうか無事に動いてくれ、そういう思いを持って毎日接しています。

種子島で働いていて、感動すること、驚くことはありますか。

藤井剛

藤井:種子島には、日々図面を見ているだけでは分からない世界が広がっています。ロケットの大きさやそれを構成するありとあらゆる部分を直接感じて学べるのは、ずっとロケットに関わる仕事をやりたいと思っていた私には本当に変えがたい経験です。一方で、これまで何度も打ち上げを行ってきたにも関わらず、それでも打ち上げごとに異なるトラブルが発生します。それに対して作業者皆で解決方法を考え、答えを出す。そういう意味でも、種子島は日々新鮮で驚きに満ちています。

畑井:私は去年の9月に見たH-IIBロケット試験機(1号機)の打ち上げが非常に印象に残っています。深夜の真っ暗な夜空が、一瞬にして昼間のように明るくなりロケットが飛翔してゆく姿はとても感動的で、人々が知恵を結集させればこんなことができるのか!と興奮しました。また日々の業務の中でも、ロケットや設備を目の前で見ることができるというのは驚きの連続で、とても貴重な経験だと思います。

最後にH-IIBロケット2号機打ち上げに向けて一言お願いします!

畑井:最後まで我が子を育てるかのごとく、大事に作業を行いますので、皆さんもぜひ親心を持って我が子が立派にミッションを遂行する姿を見守ってほしいと思います。

藤井:機体が種子島に到着してからずっとロケットを見てきましたが、H-IIBロケットはこれまで開発や打ち上げに関わってきた人たちの知恵が結集された本当に優秀なロケットだと思います。そのロケットの打ち上げを絶対に成功させるために、残りの数日自分の仕事をきっちりこなしたいと思っています。皆さんにはぜひ生でロケットの打ち上げを体験してほしいと思います。