スペースシャトル飛行再開に向けたNASAの対応について
(10月15日付け改訂版について)

改訂版1概要(Revision 1 Summary)
[仮訳]

 「NASAのスペースシャトル飛行再開とその後に向けた実施計画」の第1回目の改訂版は、コロンビア号事故調査委員会(CAIB)による勧告と気付き事項への対応における、今日までの我々の進展を反映しており、スペースシャトルプログラムによって追加された作業もこれに含まれている。本改訂版は2003年9月8日に発表された飛行再開実施計画の第1回目の見直しであり、最初の計画からの進展を示すために、変更や更新の識別がなされている。我々はシャトル飛行再開作業に焦点をあてていることと、シャトル打上げを中断している間も国際宇宙ステーション(ISS)を含め、NASAが重要な計画を続けているという事実を認識するために、文書の改名を行った。将来的には、CAIB報告書やその他コロンビア号事故から学んだ教訓をもとに、NASAの他の分野でも実施計画を策定することになると考える。

 実施計画の初版が発表されてからNASAは、計画と実施に亘り多くの重要な分野において進展があった。本改訂版で、NASAはCAIB報告書の第10章に含まれていた気付き事項への対応を追加している。これらの対応は、第2章の「基準を高める-その他の是正措置」に記載されている。CAIBの気付き事項以外にも、NASAは引き続き多様な情報源からの情報を受け入れ、評価している。それらの情報源には、まもなく発表されるCAIB報告書の第2分冊(Volume?)付録Dや、我々の職員からの提案、オンライン投書箱rtfsuggestions@nasa.govに寄せられた意見、そしてCAIB委員による助言などが含まれる。我々は提案された是正措置を組織的に評価し、これらの取り組みを本実施計画書の将来の改訂版に反映してゆく。本文書に記述した進展を我々が自ら監視することに加え、飛行を行う前には飛行再開タスク・グループが、飛行再開要求事項を実施するNASAの成功(度合い)を評価することになっている。

 NASAは多くの重要な飛行再開分野において、計画から実施に亘る進展を遂げた。重要な進展の例が、外部燃料タンク(ET)部分、熱防護システム(TPS)修理と検査、そして文化的および組織的項目である。

●外部燃料タンクの断熱材剥離の最小化

 NASAはSTS-107の外部燃料タンク断熱材剥離につながった断熱材の欠陥に関して忠実度の高い再現試験を完了した。これらの試験結果は断熱材剥離の根本原因の特定に寄与し、それは安全な飛行再開に向けての基本的条件である。それと同時に、続行中の剥離を最小にする戦略の検討に基づき、我々はより効果的な選択肢を優先させ、覆いをつける方式(containment boots)の開発を延期した。断熱材剥離のリスクをさらに低下させるため、NASAは気泡を抑える新しい液体水素タンク/タンク間構造フランジ・コンフィギュレーションの設計と試験を完了した。潜在的問題を検知する能力を改善するため、NASAは外部燃料タンク断熱材に関する最新式の非破壊検査(NDI)技術として、後方散乱X線とテラヘルツ撮像装置を試作した。これらの方法は補完的データを提供し、気泡のスクリーニングに用いられる可能性がある。

●衝突試験

 NASAは、シャトルの翼に使われた強化炭素複合材(RCC)パネルの、追加の断熱材衝突試験を実施した。それらの断熱材試験では目視で識別できる損傷はなかったが、結果を検証するために非破壊検査(NDI)を実施する。断熱材・氷・その他の材質の衝突に耐える、強化炭素複合材(RCC)とタイルの実際の構造的機能を特定するために、様々な大きさと速度を変えての追加衝突試験を今後数ヶ月かけて実行する予定である。これらの試験はどの破片がクリティカルかを特定し、改善された衝突予測モデルを立証するのに役立てられる。

●熱防護システム(TPS)の検査と修理

 軌道上でのタイル修理について、大いなる進展があった。NASAは、再突入時に負荷される加熱を再現するためにアークジェットを用いて、修理したタイルへの最初の一連の試験を完了した。これらの試験の一次的評価は期待できるものであり、非破壊検査(NDI)と破壊検査の両方によって確定される予定である。提案された船外活動(EVA)手順と軌道上でのタイル修理用工具はKC-135による無重力飛行試験を終了している。最終段階として、NASAは軌道上のシャトル強化炭素複合材(RCC)修理手順の整備に必要な取り組みを開始した。それらは機体損傷耐性の明確化と、熱防護システム(TPS)検査のためのシャトルロボットアームの延長ブームと、取り付け式のレーザ/カメラセンサ一式の開発と統合である。

●組織と文化

 NASA長官はNASAの組織と文化の評価を引き続き行う。NASAは、安全およびミッション保証局長を長としたチームを設立し、CAIB勧告7.5-1(独立技術機関の設立)及び7.5-2(安全組織改善)に対応するオプションを作成する。この取り組みの一環として、スペースシャトルプログラムは独立監督プロセスの標準化のために、民間企業や国防総省と協力している。ゴダード宇宙飛行センター所長は、CAIBの所見と勧告を、シャトルプログラム以外のNASA全体にいかに適用できるかを推奨するための補完的な(complementary)チームを率いている。NASA工学及び安全センター(NASA Engineering and Safety Center: NESC)の核となるチームはNASAラングレー研究センターに配置されている。彼らはNESCの専任職員を雇用する段階にあり、2003年11月にセンターを正式にオープンする予定である。NASAは効果的なリスク管理の妨げとなる文化的障害を特定するために、外部専門家たちからの助言を求めるなどの、多数の前向きな手段をとっている。そうして初めて我々は、訓練プログラムやその他のマネジメントイニシアチブをもって、それらの障害を排除するための具体的かつ基礎的な修正を行っていく予定である。


 NASAが遂げた進展は同時に、我々がいつ安全な飛行再開ができるかを、より妥当に推定することを可能にした。現段階で、我々は2004年9月12日〜2004年10月10日の飛行再開に向けて取り組んでいる。この日程は飛行再開の方策を我々が実施するため、及び我々の準備状況を飛行再開タスク・グループと共に検証するために、必要とあればさらに調整される。

 ISSクルーと、継続するISS組立を支援するために必要な後方支援能力を我々が有していることを確かなものにするために、NASAはシャトルマニフェストに追加のフライトを盛り込んだ。新しいフライトはSTS-121であり、STS-114から外されたいくつかのISSの利用目的を実行する予定である。これらの任務は、熱防護システム(TPS)の検査および修理の実証といった重要な飛行再開に向けての活動を行うために延期された。(訳者注:STS-121では耐熱タイル・RCCパネル修理手順の確認も行う予定である)

 我々はここ数ヶ月間に多くのことを達成してきたが、より多くの完了すべき取り組みが残っている。すべてのNASAセンター、契約業者、また他の産業界・政府機関のパートナーたちによってなされる一体となった努力が、我々をできる限り早い飛行再開へ通じる道へと導いてくれた。NASA職員の知恵と献身、及び国家のNASAミッションへの確約は、シャトルを安全に飛行再開させ、安全に帰還させるという、みなが共有する目標へと今後も我々を推進させるであろう。



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