イプシロンロケット

チームリーダが語る私たちのミッション

M-Vロケットの後継機として研究を進めていた次期固体ロケットは、その名を「イプシロン」と改め、2010年夏、本格的な開発段階へ移行しました。苦難の末に小惑星「イトカワ」のサンプルを持って地球に帰還した「はやぶさ」からまるでバトンを渡されたような絶妙なタイミング。目に見えない大きな力の存在を感じさせるものがありますね。初号機は2013年度に小型惑星望遠鏡SPRINT-Aを載せて打ち上げる予定です。これからの宇宙開発は、H-IIAロケットH-IIBロケットで打ち上げるような大きな衛星ばかりでなく、小型で小回りよく衛星を打ち上げていくことが大切です。その要請にばっちり応えるのがイプシロンです。

新たな宇宙時代の幕開け

イプシロンはペンシルから始まった固体ロケットの輝かしい歴史の集大成であるとともに、その転換点にいます。これまでロケットの性能は、単に打ち上げることのできる衛星の質量や軌道の精度などで測定されてきました。しかし、これからの宇宙時代、みんなの宇宙への敷居を下げようとしたら、これだけでは足りません。イプシロンは、これまでの固体ロケットの良さを伸ばすことはもちろん、未来を切り拓くのに相応しいロケットに変身しようとしています。それは、ロケットの打ち上げをもっと簡単で日常的なものにしようということです。そんな挑戦のひとつは、ロケットの知能化による点検の自律化やロケット管制のモバイル化のような先進技術の開拓です。これまでの大きな管制室がノートパソコン1台に集約されてしまうのです。まさにSFファンタジーの世界のようですが、すでに試作試験も無事に終わり、実現性にも胸が張れる段階に入ってきました。

射場は「聖地」内之浦

2011年1月、ようやくイプシロンロケットの打ち上げ射場が、固体ロケットの「聖地」内之浦に正式決定しました。イプシロンは、固体応援団と内之浦応援団の皆さんの熱意で成り立っていますので、本当に良かったと思います。もともと内之浦は世界的にも稀な効率的射場として有名でしたが、モバイル管制などにより、さらに磨きがかかることになります。構造がシンプルな固体ロケットとコンパクトな射場…この最強の組み合わせによって、みんなの宇宙への敷居をどんどん下げて行こうというのがイプシロンの使命です。2013年の初飛行に向けて申し分のない開発となるでしょう。JAXAとメーカさんはもちろん、宇宙ファンのみなさんとも一丸となって前進したいと思います。これからも応援よろしくお願いします。

(2011年2月 更新)

プロジェクトマネージャ 森田 泰弘