ご覧いただいているページに掲載されている情報は、過去のものであり、最新のものとは異なる場合があります。
掲載年についてはインタビュー 一覧特集 一覧にてご確認いただけます。


国際宇宙ステーションから月、そして火星を目指して 宇宙飛行士 マイケル・フォール マイケル・フォール 写真
<プロフィール>
			マイケル・フォール(Michael Foale)
			国際宇宙ステーション・コマンダー、宇宙物理学博士
			1957年1月6日 イギリス生まれ
			1983年よりNASA JSCでペイロードオフィサーとなり、STS-51G, 51-I, 61-B, 61-Cのペイロードの運用を担当。1987年に宇宙飛行士候補生に選抜。STS-45, 56, 63, 84/86(ロシアのミール宇宙ステーションに145日滞在), 103で飛行。ミール滞在時には、プログレス補給船の衝突事故による船内減圧からの復旧・姿勢の立て直しを行った。2003年10月、第8次長期滞在クルーとして国際宇宙ステーションへ向かい、194日間の滞在後、2004年4月に無事帰還。今までに4回の船外活動を経験し、宇宙滞在期間は374日間でアメリカ人としての最長記録をもつ。 マイケル・フォール 写真
 Q. 第8次長期滞在クルーとして、国際宇宙ステーションに194日間滞在なさいましたが、ミッションの大きな成果は何でしょうか?


カレリ(左)、フォール(右)宇宙飛行士
 みなさんは、実験や船外活動に関する答えを期待しているかもしれませんが、最大の成果は、飛行から戻った後も、同乗員だったアレクサンダー・カレリさんとの親交を保っているということです。国際宇宙ステーションに滞在していたのは、アメリカ人の私とロシア人のカレリさんの2人だけでした。経験豊富な2人が195日間(正確には194日間18時間35分)、お互いに腹を立てることなく一緒に仲良く作業をすることが何よりも重要でした。
 その他の成功といえば、深刻な故障を起こさなかったことです。私たちが前任者から引き継いだ時と同じ状態で、次のクルーに引き渡すことができましたから。今後も国際宇宙ステーションで科学実験が行われますし、その機会は全ての国際パートナーに与えられます。



 Q.印象に残っている科学実験は何でしょうか?


PFMI実験を行うフォール宇宙飛行士  
 
宇宙における人の骨と筋肉の劣化状況を調査する実験を行うフォール宇宙飛行士  
 
 私は、英国ケンブリッジ大学で物理学を、博士課程では宇宙実験物理学を専攻し、物理学者としての教育を受けてきました。ですから、物質が宇宙でどのように変化するかを観察する実験に非常に興味を持っています。  
 例えば、気泡の生成と動きに関する研究(PFMI:Pore Formation and Mobility Investigation)実験は非常に興味深いものでした。この実験では、微小重力科学グローブボックス(MSG:Microgravity Science Glovebox)の中で物質を溶かし、物質中に存在する気泡の生成と相互作用を観測します。ワックスを融解させて管に入れ、管の中でゆっくり凝固させると、樹枝状の結晶を形成しますが、宇宙で金属を冷却、凝固した際にもこれとよく似た現象が起きました。液体金属と固体金属、液体ワックスと固体ワックスの境目には、気泡が生成され、動いていました。液体内で気泡が移動していたわけですが、宇宙には重力が存在せず、物体を動き回らせる対流もありません。ですから、なぜそのように物体が動くのかという疑問がわいてきます。この実験では、金属や結晶のサンプルの中に生成する気泡が、そのサンプルの強度と有用性をどのように損なうかが観測され、地上で製造される金属内に気泡が生成されるのを防ぐための改善策を研究します。このようなプロセスの中で気泡の生成を防止し、その結果として、より強い材料を作ることを目的としています。
 また、微小重力下での流体の混和性(MFMG:Miscible Fluids in Microgravity)実験は、革新的で創意に富んでいました。この実験では、水の入った容器に蜂蜜を注入し、微小重力下でこの2つがどのように混ざるかを観察します。蜂蜜は、ロシアの缶詰の蜂蜜を使用しましたが、宇宙には重力がなく、缶に穴をあけて下に向けても蜂蜜は落ちてきません。そのため缶の中の蜂蜜を注射器で抽出し、それを水の入った管に注入しました。この実験では、重力の干渉無しで流体がどのように混ざっていくかを調べ、合成樹脂から製薬まで多くの製造プロセスの改善に結びつくと期待されています。

 今回のミッションでは、興味深い結果が出た実験がたくさんありました。私は、実験が成功するかどうかは、研究者が予期した方法で実験を行うことができるかという点にかかっていると思います。研究者が結果に満足しているかどうかは私には分かりません。
 例えば、先程お話した蜂蜜の実験では、研究者は蜂蜜が長い流れを形成して、水の中でゆっくりと模様を描きながら回転すると予想していたでしょう。しかし実際にはそうなりませんでした。大変珍しい結果となりましたが、私たちが期待していたほどおもしろい現象ではありませんでした。これは、実験は成功したものの、予期せぬ結果となった一例です。


1  2  3  4  5 次へ