Q.現在国際宇宙ステーションのクルーは2名ですが、それについてどう思われますか?
国際宇宙ステーションにわずか2名しかいないというのが、理想的な姿ではないことは明らかです。グループに2名しかいなければ、本当に小さな国際グループになってしまいます。国際宇宙ステーションに3名が滞在する状態に戻れる日を心から待ち望んでいます。また、スペースシャトルが再び国際クルーを乗せて国際宇宙ステーションに戻れる日が早くきてほしいと思っています。それは、今後の建設を進めるためだけでなく、ヨーロッパと日本の実験モジュール「きぼう」を取り付けるためにもです。それが実現すると、6名程のクルーが滞在でき、一時に3〜4カ国のメンバーが参加できるようになります。本当の意味で国際的になり、国際宇宙ステーションにとって興味深い時代が訪れます。
Q.軌道上では、勤務時間以外はどんなことをして過ごしていましたか?
一番の趣味は、窓の外を眺めることでした。単に、写真撮影をするという観点で地球を眺めていたわけではありません。私は以前ミール宇宙ステーションでかなり長く滞在をしたことがありますから、今回はただ眺めるだけでなく、上空を飛行する国について学びたいと思っていました。そのために、自分の横に地図帳や百科事典を置き、それぞれの国について調べました。
例えば、アフリカ東部の小国上空を飛行している時に「あれがブルンジだな」と思うだけでなく、百科事典を使ってブルンジの政治制度について学びました。そして日本上空を飛行する際には、「あれが東京だ。大きいな」と思うだけでなく、眼下にある日本の経済や国民について調べたのです。このように、私は空き時間に窓の外を眺め、地理について学ぼうと努めました。
また地球上の各国を巡る地理的な旅を再現できるように、約4000枚の写真撮影をしました。地平線にカメラを向け、前方へ飛行しながら地球を眺めるという視点でスナップ写真を撮り、非常に胸躍りました。よい写真が撮れたと思います。私はそれらの写真をアルバムにまとめたいと思っています。通常宇宙プロジェクトでは、都市や湖を拡大撮影することに関心がありますが、私は地理的な観点から捉えようと思っています。
Q.国際宇宙ステーションのプロジェクトで魅力を感じていることは何ですか?
国際宇宙ステーションは単なるアメリカのプロジェクトではありません。アメリカ人だけに出会う場所でなく、さまざまな人々に出会う場所です。
宇宙では素晴らしいことができますが、他の民族の文化を学べば、それはさらに有益なものになります。
私にとっての異文化間交流は、ロシアの宇宙ステーション「ミール」に145日間滞在したのが始まりでした。それ以前には全く予期していませんでしたが、私はロシア語を学び、話せるようになり、異文化についても知ることができました。そして現在は国際宇宙ステーションのプロジェクトに参加し、ヨーロッパの宇宙飛行士と出会い、ヨーロッパを形成する各国について学ぶ機会を得ています。日本人の宇宙飛行士にも、中国人の宇宙飛行士にも出会いました。
私は国際宇宙ステーションプロジェクトの国際的な側面を最大限に活用し、国際的な友好関係を築いてきましたし、今後もそうしたいと思っています。
Q.宇宙滞在期間374日間でアメリカ人最長記録を樹立されましたが、宇宙に長く滞在する秘訣は何ですか?
やはり眺めを楽しむことです。窓から見るのも良いですが、船外活動をする時は特別です。船外活動用の宇宙服を着て、顔の周り全体を覆うヘルメットを被りますが、自分の顔と宇宙の間にあるのは、ヘルメットの透明なプレキシグラス(飛行機の風防や窓ガラスなどに用いるアクリル樹脂)だけになります。そのグラスを通して目に入ってくるまばゆいばかりの鮮やかな眺めは、私の頭の中を混乱させてしまうほど素晴らしいものです。宇宙ステーションの窓はヘルメットのグラスより遥かに厚く、光を吸収してしまいますから、ステーション内部から見る眺めとは違います。ですから、船外に出る経験はとても貴重でした。
地球の夜側の軌道を回っている時には、銀河全体がおおきく膨らんで広がっているのが見え、その中心は射手座に向かっていました。夜の地球に火の明かりや人工の光が輝いている姿は、他の星を寄せつけない黒い円盤のようで、非常に素晴らしいものでした。このとてつもない光景の数々が私の熱意と興味を駆り立て、長いフライトを続けることができたのです。
私にとって長時間宇宙に滞在することはそんなに難しいことではありません。仕事や趣味など何かすることがあれば、半年間の滞在は大変なことではないのです。
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