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長期ビジョンの実現に向けて
2005年4月、JAXAは今後20年間の長期ビジョンを発表しました。やはり組織には経営理念があり、ビジョンがあってこそ初めて事業展開ができるので、ビジョンを持つのは当然だと思います。宇宙で何かを実現するにはある程度の準備期間が必要なため、20年という期間を選びましたが、「20年もある」と思わず、できることから実現させ、できるだけ早く国民の皆さんに見えるものにしたいと思っています。

ビジョンの中で最も大事で、今まで十分でなかったと感じるのは、宇宙の利用です。そこで打ち出されたのが、災害監視システムの構築です。JAXAだけで行うものではありませんが、誰かが引っ張っていくことが必要ですので、JAXAがその任に当たろうと新体制を作りました。このシステム構築については、昨年の10月にアジア関係国の会議があった際に、「アジアで一緒になってやろうじゃないか」と提案をし、現在、各国に検討してもらっているところです。参加した国の大部分には賛成してもらい、早くやろうという話になっています。現実的には、数年かけてやることになるでしょうが、まずは着手できたかなと思います。
また、宇宙利用で特に直近で行いたいと思っているのは、新しい地球環境対策のプロジェクトを立ち上げることです。この環境問題への取り組みは、宇宙開発委員会でも早速取り上げていただき、ぜひやろうということになりました。それによって作成された10年計画に基づき、衛星や観測装置の開発を継続的に行っていく予定です。

長期ビジョンを実現させるのは、JAXA職員一人一人のアイデアであり、発想であり、気持ちです。ですから、ビジョンを作れば自分に何か仕事がくるだろうと思わないで、むしろ、ビジョンの実現に向けて自分がどう貢献できるかを考えてほしいと、JAXAの職員に話しています。また、長期ビジョンを実現させるために、職員から募集して新プロジェクトを作りたいと考えています。そこに新しい希望者を集め、プロジェクトを進めていくというのは、“One JAXA運動”としても面白い方法ではないかと思います。新しい発想に期待しています。今年、2006年にはその具体化ができるでしょう。



航空プログラムグループの発足
昨年10月、新たな部門として「航空プログラムグループ」を発足させました。日本で航空の研究をしているのは、メーカーを除き、国の機関としてはJAXAだけです。しかし、「宇宙航空研究開発機構」と、名前に「航空」という文字が入っているものの、新聞などでは「宇宙機構」と略称されて、航空が見落とされがちでした。そこで、航空をやっていることを明確にし、航空の研究者たちにしっかりとしたモチベーションを持ってほしいという目的で、新たな組織を作りました。20世紀が自動車の時代だったとしたら、21世紀は飛行機の時代になるでしょう。ですから日本の航空業界も頑張っていくべきだと思います。
具体的には、日本の国産飛行機を早く作ってもらいたいと思っています。約40年前に誕生した初の国産機YS-11は、今年いっぱいで全機が引退する予定です。そういう意味でも、早く国産機を作るべきです。これについては、すでに経済産業省のプロジェクトがありますから、JAXAとしても大いに協力し、早期実現を目指します。

また、昨年は、超音速飛行機の開発のためにオーストラリアのウーメラ実験場でマッハ2の小型超音速実験機の飛行実験を行い、成功を収めました。これは無人飛行実験でしたが、いずれは有人でマッハ5くらいの極超音速までいきたいと考えています。
極超音速飛行機はおそらく大陸間往復に使用されるでしょうから、日本だけというより世界各国の航空業界と分担しながら、協調して開発していくことになるでしょう。そのために、日本は何ができるかを見極める必要があります。長期ビジョンを作って将来展望を明らかにしたことにより、そのターゲットに向かって具体的に進めていくという道が定まったように思います。
小型超音速実験機 写真
  
オーストラリアで行われた
小型超音速実験機の飛行実験


次世代超音速輸送機「SST」 写真
  
次世代超音速輸送機「SST」


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