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世界がJAXAに期待すること
昨年は、2月に国際宇宙ステーションの関係5機関のトップ会談があり、6月にはパリの航空ショーで、国際宇宙ステーションの参加各国が集まって会議を行いました。さらに、10月には福岡の国際宇宙会議(IAC)で、各宇宙機関の長官が集まりました。いずれも個別会談も行い、海外からの要望や評価を直接伺うことができました。

日本への要望は、まず「共同研究を着実にやりましょう」ということでした。宇宙で何かを実現する場合は時間がかかりますので、計画をきちんと立て、例えば、何年で新しい衛星を作り、観測機器はアメリカがこれ、ヨーロッパがこれを供給するという共同作業を行うことが必要です。お互いがきちんとやらないと、どこかで計画がくるってしまいます。宇宙の分野では、国際協調の精神が大変強いという印象があります。

そして日本の評価は、国際宇宙ステーションについては、総経費の12.8パーセントを支出し、貢献をしているとても重要な立場であり、かつ、日本の実験棟を打ち上げますので、国際的な役割をきちんと分担しているという認識を持たれています。
また、宇宙科学分野での評価が予想以上に高いのが印象的でした。日本は少ない予算でいろいろなことに挑戦し、しかも他の国と競合せず、他の国がやらないことをやってきたという点で高く評価されています。「はやぶさ」がその代表的な例ですし、昨年7月に打ち上げたX線天文衛星「すざく」も、X線天文は日本の得意な分野のひとつですから、そういう意味で日本が自分の強い分野を確実にやっているという評価をしてくれています。
特に「はやぶさ」の評価は海外の方が高く、外国の新聞や雑誌にいろいろ掲載されたほか、私のところにもお祝いのレターや電報がたくさん届きました。いろいろ不具合もありましたが、無事イトカワに到着して写真撮影もできたことは、かなりの成功だったと思います。今後のデータ分析によって、新しい発見があるのではないかと期待しています。「はやぶさ」は、世界的にも大変な偉業を成し遂げたのだと改めて実感しました。

小惑星探査機「はやぶさ」 写真
  
小惑星探査機「はやぶさ」

X線天文衛星「すざく」 写真
  
X線天文衛星「すざく」



国際宇宙ステーションの建設の見通し
スペースシャトルの事故などで国際宇宙ステーションの建設が遅れ、時間がかかりすぎているのが最大の問題です。アメリカは2004年、新しい宇宙政策を発表し、国際宇宙ステーションへの取り組み方を変更することになりました。大きく変わった点は、スペースシャトルに依存しないということです。完成は2010年ですが、スペースシャトルの打ち上げ回数を28回から18回に削減し、代替機も使って宇宙ステーションを完成させようというのです。
その代替機の最たるものがロシアのロケットなのですが、NASAは、米国の民間企業に補給関係のロケット打ち上げを委託することも考えています。これは、宇宙ステーションを完成はさせるが、その手段を変えようというもので、日本やヨーロッパに関しては特に方針変更はないと考えていただければと思います。
日本の実験棟「きぼう」は、2007年から2008年にかけて打ち上げる予定で、われわれもその準備に取りかかっています。「きぼう」は日本人の宇宙飛行士が一緒に飛んで組み立てて、かつ、長期滞在も行わなければなりませんから、まずはそのための準備が必要です。そして、そこで行う実験の準備も進めなければなりません。宇宙飛行士は宇宙へ行くだけでなく、科学者が期待した実験をうまく遂行することに意義があるのです。
また、日本は2009年頃の完成を目指して、HTV(H-II Transfer Vehicle)という補給船を開発中です。日本の実験棟を打ち上げた後の補給は、自力で行うことになっていますが、スペースシャトルの打ち上げ回数が削減されるという理由から、日本のHTVをアメリカが使うことになるかもしれません。国際宇宙ステーションが完成すると、常時6名が滞在し、実験を行いますから、食料品や飲み物、酸素などの補給が重要になってきます。ですから、日本の補給船の開発を確実に進めていきたいと思っています。
日本実験棟「きぼう」 写真
  
日本実験棟「きぼう」

宇宙ステーション補給機「HTV」 写真
  
宇宙ステーション補給機「HTV」



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