![]() ![]() ![]() Q.日本の宇宙開発の問題点についてどう思われますか? ![]() ![]() 国家は宇宙開発に対して経済的な見返りを求めるものですが、「はやぶさ」や「セレーネ」のような宇宙探査は目先の利益を求めて行うものではありません。現在、日本が第1に考えているのは、国民に最大限還元できるミッションは何かということで、それはもちろん素晴らしいことですが、同時に、国民が宇宙に興味を抱き、参加でき、想像力や知的好奇心を刺激する宇宙探査のようなミッションも継続していく必要があると思います。 その実績を足場に、国民との関係を築いていってほしいのです。日本には、私たちと協力体制にある日本惑星協会がありますが、宇宙探査の成果を一般の方に伝えるという意味で、JAXAと密に連絡を取り合うことができればと思います。一般市民に宇宙探査の意義を直接伝えるには、マスコミを通じた広報活動が重要です。また、教育プログラムなどで学生が参加できる場を作り、宇宙探査に関するインスピレーションを与えるための努力が必要です。例えば、「はやぶさ」は映画の題材として絶好ではないでしょうか。人間と宇宙船が一体となった小惑星への冒険をテーマにした映画はいかがでしょう。日本は一般大衆がもっと宇宙探査に注目する必要があると思います。残念ながら、日本はその努力を怠っていたように感じます。日本は数年前までは、科学者だけが宇宙探査に関わっていたように思いますが、これからはもっと国民が関与するようになっていくでしょう。そのためにも一般の方を興奮の渦に巻き込むようなミッションを積極的に考えてほしいと思います。今の日本ならそれができるでしょう。宇宙に関して素晴らしい発見があれば、自ずと国民は興奮し、関心を持ち続けます。 ![]() Q.「はやぶさ」の予算は、NASAでは比較的低予算と言われる「スターダスト」より少ないですが、どのように思われますか? ![]() 日本、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアのコストを比較しようとする人もますが、それは困難を極める作業です。国境を越えたところでコストの効率性を判断するのは難しいです。(はやぶさ:130億円、スターダスト:165億円) 私に言えるのは、日本がそのような低予算でこのような素晴しいミッションを実現させたのは、本当に驚くべきことで、私たちの賞賛の的となっています。 日本は低予算にも関わらず、「はやぶさ」をはじめ、これまでにとても得るものの多いミッションを行ってきました。日本は1億5000万ドル(約170億円)規模のミッションをもっと行うべきだと思っています。例えば、アメリカの火星探査ローバーは10億ドル(約1100億円)以上のコストですが、これまでの火星探索を凌駕する能力を持っています。20年前はもっとシンプルな周回機と着陸艇でした。ですから成功を重ねていくことによって、コストへの理解も得られるようになることも事実です。今回の「はやぶさ」や来年打ち上げられる予定の月ミッション「セレーネ」などで成果をあげることで、将来的にはもう少しコストを上げることも許されるようになるのではないでしょうか。 ![]() ![]() ![]() Q.日本の国際協力の方法についてどう思われますか? ![]()
日本は「はやぶさ」を通じて惑星探査の分野でリーダー的立場を確固たるものにしました。世界中の注目を集めた今、日本にとって絶好のチャンスです。アメリカとも新たな関係を築く段階にあるでしょう。「はやぶさ」で自信を手にした日本には、新しい発想で他国との協力関係を作り上げることができる、また他国と共同作業を行うことができる、そういった新しいミッションを検討してほしいと思います。ですから日本には、従来とは違った側面から物事を検討していただき、新たな決断を下してほしい、それができるのが今だと思います。 ![]() Q.科学探査で国際協力をする意義は何でしょうか? ![]() 火星からサンプルを持ち帰ったり、月面基地を設置したり、月や火星へ有人飛行するといった大規模なミッションを行うためには、国際的な協力が必要になってきますが、それには2つの理由があります。第1に、一カ国で行うには財政的な負担が大きすぎるということです。それ以上に重要なのは、国際的な協力関係が、一般市民の支持を得るためには必要です。一般の視点で見ると、宇宙という他の世界に進出することは、地球全体(地球人)が他の世界に進出することなのです。ですから国際的な協力関係のもとで資金や技術を有効活用し、よりよい結果を生むために貢献すべきだと思います。 |
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