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JAXAの小型衛星公募に期待

Q. JAXAが小型衛星の打ち上げを支援すると発表しましたが、これについてどう思われますか?

とてもありがたい話で、私たちも応募の準備をしています。私たちはこれまでロシアで超小型衛星を打ち上げてもらいましたが、海外に物を送るにはいろいろな手続きが必要ですし、渡航費もかかります。国内のロケットで打ち上げてくれるのであれば衛星開発に着手したいと思っているところは多いのではないでしょうか。今回のJAXAの小型衛星公募は、小型衛星に対する熱を高める意味でも、非常に意義あることだと思います。
現在は日本国内だけに限っていますが、将来的には、他の国の衛星も打ち上げるようになってくれればと思います。お互いに助け合うことによって、ネットワークが広がって、もっと宇宙開発が活性化していくと思います。
そして私が第一に望むのは、このプロジェクトを継続的にやってほしいということです。最初なのでいろいろなことが起こるかもしれませんが、是非継続してほしいです。期待しています。


Q. JAXAと大学の関係についてどう思われますか?


JAXAの小型実証衛星
「マイクロラブサット」1号機


「ふろしき衛星」の実験に使われた
観測ロケットS-310-36号機(提供:東京大学中須賀研究室)








今はとても良い関係だと思います。2002年には、JAXAが打ち上げた小型実証衛星「μ-LabSat(マイクロラブサット)」の衛星上で私たちの実験をさせていただき、技術的な成果を得ることができました。また、JAXAのS-310という観測ロケットを使って「ふろしき衛星」の展開実験を行ったり、大気球を使って「CubeSat(キューブサット)」の通信実験を行うほか、放射線試験や熱真空試験をするための施設を借りるなど、コラボレーション(共同作業)を数多く行っています。この関係を続けつつ、今後は、本当の意味での研究のコラボレーションをできればと思います。JAXAにもたくさんの研究者がいて、それぞれに高いレベルの技術を持っていらっしゃるので、その方たちと組むことによって、1+1=2ではなく、3や4になるような共同研究ができると思います。そして、そこで出た成果を、1〜2年という短いサイクルで打ち上げる私たちの衛星を使って実証していく。そんな研究的なコラボレーションをしたいです。


Q. 宇宙開発における大学の役割はどのようなものだと思われますか?

私たちは、大学・高専学生による手作り衛星やロケットなどの実践的な宇宙工学の技術開発や人材育成を目的に、「UNISEC(ユニセック=NPO法人大学宇宙工学コンソーシアム)」という組織を作り、私はその副理事長を前年度まで務めていました。このUNISECがやろうとしていることが、宇宙開発における大学の役割だと思います。
技術開発にはいろいろなフェーズがありますが、例えば、新しい技術の種というのは、たくさんの人が試行錯誤する中で生まれてきます。いろいろな人がいろいろなアイデアを出してやっていく中で、これは見込みがあるということに対して予算をつけて技術開発をしていく、そういう最初の芽出しのところにはたくさんの人が必要です。それはおそらくJAXAの方だけではできないと思いますから、大学にもそういうことをするチャンスを与えてほしい。チャンスをくださいというのは、研究開発費をくださいということでもあります。大きい額でなくてもよいからお金を出していただいて、大学が新しい技術の種を作っていく。それをJAXAが見ていて、「あの種いいね」と拾い上げていただき、実用化していくという形がとれたらと思います。大学にはたくさんの学生や先生がいて、たくさんのアイデアがあります。そのアイデアをうまく活かしていただきたいと思います。
JAXAからは実験設備を提供していただく他、ワークショップを開いて技術交流するなど、UNISECの活動を支援していただいています。将来的には、支援という形にとどまるのではなく、例えば人材開発など、ある一部の業務をUNISECに委託していただく形でJAXAとコラボレーションしていきたいというのが、私の希望です。そのためにも、大学が積極的に宇宙開発に貢献する「技術開発」と「人材開発」をするべきだと思います。例えば、大型衛星の場合は開発から打ち上げまでに10年くらいかかり、1人の人が関われる衛星は一生のうちに2機か3機です。一方私の研究室では、だいたい4年生で研究室に入ってきて、修士や博士課程が終わるまで6年間いて、その間に2機の打ち上げを経験した学生もいます。人材開発という観点からいうと、サイクルを短く、早く回すというのが非常に重要で、大学の間に2〜3回衛星の打ち上げを経験した学生が実践的な宇宙開発の場に行くと、より貢献できると思います。

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