ジョージワシントン大学国際関係学部の宇宙政策研究所では、国際協力や国際競争、世界の宇宙計画の歴史や現在の活動状況など、宇宙活動を国際的な角度から研究しています。また、宇宙政策の分野における学生のキャリアトレーニングも行っており、世界中から集まった研究者も私たちと一緒に研究に取り組んでいます。
コロンビア事故の原因はいくつかあります。まず技術面ですが、スペースシャトルの外部タンク断熱材から剥がれ落ちた破片が、左翼前縁に衝突して大きな穴を開けました。そしてシャトルの大気圏再突入で、3000度の高温の空気が左翼に吹き込み、構造を溶かしました。その結果、左翼が脱落して、シャトルの空中分解を引き起こしたのです。しかし事故調査中に、組織的要因、管理体制における問題が根底にあったことが判明しました。つまり、 NASAのスペースシャトル計画における不適切な管理体制や予算不足、大変危険な乗り物であることの認識不足など、責任ある業務が完全に遂行されていなかったのです。
コロンビア事故以後に見られる大きな変化は、断熱材によって引き起こされかねない損傷の検討と、より厳しい検査技術の習得、そして修理技術の向上です。しかし何といっても一番大きな変化は、マネジメント(管理体制)の見直しでしょう。スペースシャトルを日常的な乗り物ではなく、危険が伴う宇宙船として扱うなど、リスクを十分に考慮した安全性への取り組みが強化されました。コロンビア事故後のフライトと事故以前では、NASAの管理体制が大きく変わりました。
スペースシャトルは今まで人間が作った中で一番危険が伴う装置の一つだと思います。少なくとも、人間の手によって作られた最も複雑な機械です。宇宙飛行は常に危険が伴います。スペースシャトルの人間を宇宙へ連れて行き、無事に地球へ連れ戻すという任務は、大きな危険が伴うものなのです。
近年JAXAは、ミッションの安全性やH-IIAロケットの打ち上げ、衛星の信頼性において素晴らしい実績をあげています。私は1997年から1999年までJAXA統合前のNASDAの評価委員をしていましたが、日本人と外国人の半々で構成されたかなりハイレベルな委員会でした。日本の宇宙計画の把握に3年を費やした結果、いくつかの問題点が見つかりました。まず、請負業者の業務に対するNASDAの監督が不十分でした。それから宇宙計画は、開始から終わりまで3年以上はかかりますが、NASDAでは、3年ごとに人事異動があり、それが計画の連続性に影響を与えていました。そのほかにも将来のクオリティ・コントロールやミッションを遂行するにあたっての懸念材料も見つかりました。残念なことに、委員会で評価している間に事故がおこり懸念が現実のものとなってしまいましたが、これらの問題点を改善するために、JAXA上層部は私たちの報告を参考にして業務過程の見直しを計りました。アメリカもそうですが、日本も過去の過ちから学んでいます。
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