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Q.世界の人々は、宇宙開発のどのような点に期待していると思いますか?

アメリカを筆頭に多くの国々が参加する地球軌道外探査の開始について知っている人はまだ少ないと思います。40年前の1969年から1972年にアポロ計画で月へ行った頃でしたら、宇宙開発は前例がありませんでしたから非常にエキサイティングなことでした。しかし、今日では映画やビデオゲームが溢れ、いまの若者は「スターウォーズ」や「スタートレック」などの映画を見て育っていますから、月探査に関して昔ほどのインパクトが期待できないのは仕方のないことです。でも、おそらくまだ25年くらい先のことですが、火星に初めて人間が行く時は世間も盛り上がるでしょう。人間があれほどの遠い星へ出発することに対し、みんな感動すると思います。
そしてもし、夜に月を眺めたらそこに明かりがあり、人間が住み活動している証を見たら感動的でしょう。それまでには時間がかかりますが、いつの日か、世界中の人々が宇宙探査を人類史上の大冒険の1つとして語るようになるはずです。


Q.ログスドン先生は、スミソニアン航空宇宙博物館や米国惑星協会の委員も務められていますが、一般の人に宇宙開発に興味を持ってもらうためにはどのようなことをしたらいいのでしょうか?

すでに他にいろいろと関心事がある人々に向けて、宇宙での活動について日常的に発信しようとしてもそれは困難です。それに、一般の人が興味を持ってくれることを当てにしたプログラムは長続きしません。常に大勢を巻き込もうとするアイデアは大変いいアイデアに聞こえますが、私はむしろリーダーが率先して有益性を唱え、人々の理解を得るために活動をするべきだと思います。一般の意見に左右されるのではなく、上に立つ者がリーダーシップを発揮しながら最先端の面白いことを進めていく形がいいと思います。
さまざまな教育活動や一般向けのイベント、また科学博物館などを通して宇宙での活動を知ってもらい、一般の方々の意見にも耳を傾けるといったJAXAの活動は素晴らしいものです。しかし、常に大勢の一般参加を求め、そこから将来の方向性を探そうとするやり方は得策だと思いません。


Q.ログスドン先生は小さい頃から宇宙に興味があったのですか?

空を眺めるのは好きで天文学には興味がありました。でも私は、サイエンスフィクションをあまり読まずに宇宙関係でキャリアを築いた数少ない人間です。世界初の人工衛星、ロシアの「スプートニク1号」が打ち上げられた1957年10月4日の夜、私はまだ学生でしたが、シカゴの少し北にあるミルウォーキーの野球チームがワールドシリーズで優勝した試合を見ていました。当時は野球の大ファンでしたので、その夜は宇宙に目もくれなかったようです。試合後ワールドシリーズを祝ってパーティに出かけたので、スプートニクについてはあまりよく覚えていないんです。アメリカが月に行く計画を発表した、ケネディの演説も覚えていません。子供時代から強い興味があった訳ではなく、私が宇宙に携わるようになったのは20代に入ってからでした。
どうして宇宙に興味を持つようになったかと言うと、宇宙は素晴らしいからです。私は客観的に宇宙活動を見る側でしたが、1969年7月に初めてアポロ11号の打ち上げを目の前で見ました。その日、月へ向かう3人の宇宙飛行士が私のそばを歩いて行きました。月へ行くことほど素晴らしいことがあるでしょうか?今では彼らは私の仲間です。宇宙の大冒険と、今まで成し遂げてきたこと全てを一緒に分かち合えるのです。またアメリカだけでなく、世界の宇宙機関の上層部と仕事をする機会にも恵まれました。宇宙は人類にとって非常に魅力あるところです。そのような分野で仕事することができ、本当に有り難く思っています。


Q.宇宙開発における個人的な夢は何ですか?

私は人間が月へ飛び立って行くのを見ていますので、夢の一部はもう現実になりました。しかし、私より後の世代が地球の軌道上をくるくる回っていることしか見たことがないのが残念です。私は次に人類が月へ戻るまでは生きていたいと思います。でも、火星での第一歩を見るのは無理だと思っています。しかし、私の子供や孫たちは火星に人類が降り立つのをきっと見られるでしょう。ですから近い将来、次の世代の人たちが、人類の宇宙探査再開を目撃できることを、私はとても嬉しく思います。


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