宇宙線は、宇宙空間をほぼ光速で飛び交う高エネルギーの荷電粒子(主に陽子)で、地球にたえず降り注いでいます。20 世紀初めに宇宙線が発見されて以来、宇宙線がどこでどのように生成され、加速されるのかが大きな疑問でした。「すざく」の観測により、宇宙線の起源に迫るいくつかの重要な成果が得られています。その1つは、アメリカのX線観測衛星「チャンドラ」と協力して行った、超新星残骸 RX J1713-3946の観測です。この天体は、X線だけでなく、超高エネルギーガンマ線で輝いているため、宇宙線の製造工場ではと注目されていました。
まず、非常に優れた空間分解能を持つ「チャンドラ」のX線望遠鏡により、わずか1年の間に強度が変動するX線をとらえました。宇宙線に含まれる高エネルギー電子の分布を示した、2000年、2005年、2006年の画像から、1年という短期間に、高エネルギー電子が、非常に小さな領域の中で現れたり消えたりしているのが分かります。これは、荷電粒子が、エネルギーを得たり(加速)、エネルギーを失ったり(冷却)している様子をみていることになります。このように、宇宙線の加速現象を直接的にとらえたのは初めてのことです。一方、「すざく」では、40keV(キロ電子ボルト)という高いエネルギーまでのX線スペクトルの測定を行い、X線の強度が10 keV付近から急激に弱まることが分かりました。この高いエネルギーまでX線のスペクトルが延びていることは、電子も効率よく加速されていることを示します。2つの衛星の観測結果を組み合わせることにより、陽子を主成分とする宇宙線が、超新星残骸の衝撃波で加速、生成されていることが明らかになりました。