ソーラー電力セイル実証機「イカロス」
セイルに貼り付けた薄膜太陽電池は、通常の人工衛星に使われている太陽電池よりも軽量で、取り扱いやすいです。太陽光発電システムの電池開発の先駆けにもなります。今後、さらに安く大量に安定供給できるようになれば、一般社会にも普及し、環境問題にも貢献できると思います。また、大型の構造物を展開する技術は、テントを張る技術などに応用できるのではと思います。
宇宙というよりは、周りまわりの自然すべてに興味がありました。例えば、昆虫が好きでしたし、海や山にも興味があり、自然のものの一つとして、星空を見るのも好きでした。私が宇宙の道に進みたいと思ったきっかけは、高校生の時にテレビで、アメリカの惑星探査機「ボイジャー」を知ったことです。ちょうどその頃、ボイジャー2号が海王星を通過して、これから太陽系外に旅をするということで、関係者が集まってパーティのようなものをやっていました。そのようすをテレビで見て、ボイジャー探査機はすごいと思ったのと同時に、こんなに大勢の人が惑星探査ミッションに関わっているのだと感動しました。そして、自分も宇宙ミッションに関わる一人になりたいと思いました。
究極的には、人間が持つ冒険心だと思います。「山になぜ登るかと言うと、そこに山があるから」と言う人がいますが、それに近いような気がします。実際に惑星に行って探査をすればいろいろなことが分かって宇宙科学が発展し、特に人類の生命の痕跡や、地球や宇宙の起源について知ることができますが、もっと根本には人間が持って生まれた探究心によるものが大きいと思います。私が木星圏を探査したいと思った一つの大きな理由は、これまで自分たちで行ったことがないからですし、きっと木星圏を探査したら、次には土星、天王星、海王星に行きたくなるでしょう。
ただし、税金を使う限り、自分たちの興味だけではできません。世界第一級の理学的・工学的成果を出せるようなミッションを遂行していきたいと思います。先進の技術開発は、宇宙分野のみならず、さまざまな分野に今後、応用できます。身近な生活にもつながると信じています。
私の子供はまだ2歳ですが、電車やバス、車、船など乗り物に興味があります。特に電車が好きで、しかも、いろいろな電車に乗らないと納得できないらしく、週末に子供を連れて電車に乗りに行くととても喜びます。私は、宇宙船が一般の人の身近な乗り物になって、自分たちが作った宇宙船で、冒険の旅に出るような時代がくればいいなと思います。子供たちが乗れる宇宙船をぜひ作ってみたいと思います。
JAXA月・惑星探査プログラムグループ 助教 博士(工学)
1999年、東京工業大学大学院理工学研究科機械物理工学専攻修士課程修了。1999年、東京工業大学工学部機械宇宙学科助手。2003年、JAXA宇宙科学研究本部宇宙航行システム研究系助手。これまでに、小惑星探査機「はやぶさ」の運用やM-Vロケットの打ち上げ、S-310観測ロケット実験や大気球実験などに携わる。現在は、ソーラー電力セイル実証機「イカロス」の開発責任者を務めている。専門は、動力学・制御、宇宙機システム。
※ 関連リンク: | 小型ソーラー電力セイル実証機「IKAROS」 |