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アジア連携による安全安心なアジア社会の実現を〜JAXAの災害・環境監視、人材育成プロジェクト〜
地球規模の環境対策にも貢献
2009年5月にタイで行われたSAFEのワークショップ(提供:GISTDA/JAXA)
2009年5月にタイで行われたSAFEのワークショップ(提供:GISTDA/JAXA)

Q. 今後のAPRSAFの新しい取り組みは何でしょうか?

これまで災害監視を目的とした「センチネル・アジア」プロジェクトを推進してきましたが、昨年のAPRSAFで日本が提案した、環境監視プロジェクト「SAFE」が新規に始まりました。SAFEはSpace Application for Environmentの略で、「宇宙技術による環境監視」という意味です。このプロジェクトは、水問題、森林開発、土地利用など地域の問題を識別して、それらを解決するために関係機関が集まり、衛星データや宇宙技術がどう使えるかを検討し、利用システムを作っていく活動です。その第一歩として、昨年は、ベトナムにおける水資源管理と土地利用監視の2つの問題で、衛星データを行政に利用してもらうシステムを試験的に作りました。今年は、活動をラオスとカンボジアに拡大する予定ですが、これを一つのケーススタディとして、他のアジア地域、さらにはアジア全域の環境対策に貢献できるプロジェクトへと発展させていきたいと思います。
一方、ヨーロッパには、「GMES: Global Monitoring for Environment and Security」というヨーロッパとアフリカを対象とした、環境と安全保障のための監視プログラムがあります。GMESには難民サポートなどの安全保障問題や災害監視も含まれていますが、いろいろな地域問題に対応した国際的なコンソーシアム(共同事業体)を設立し、利用システムを作り始めています。そういったものが社会にだんだん定着し、ヨーロッパ・アフリカの社会基盤になりつつありますが、アジアでもこのような利用の仕組みを作っていかなければならないと思います。そのために、災害監視の「センチネル・アジア」を成功させ、次に、環境監視のSAFEプロジェクト、そして、それらを小型衛星の人材育成という形でサポートするためのSTAR計画を確実に進めていく必要があります。
今後は、地球観測衛星だけでなく、超高速インターネット衛星「きずな」や、測位情報を提供する準天頂衛星なども組み合わせて、衛星の統合利用システムの構築が進むと考えられます。アジアにはインターネット環境が整備されていない地域がたくさんありますが、災害被害を軽減するためにも、情報を迅速に伝えるネットワークが必要です。また、GPS(全地球測位システム)機能は、災害監視だけでなく農業、漁業、運輸等にも活用できますので、そういった他の面での協力にも広がる可能性があります。
JAXA全体で豊かなアジアの実現を


Q. これからのJAXAのアジア展開についての展望を教えてください。

日本はこれまでアジアでの宇宙開発の先導役として、宇宙利用を進めてきましたが、これからも欧米を含めた宇宙先進国の一員としてリーダーシップを発揮していきたいと考えています。そのために必要なのは、宇宙を利用する地域協力の仕組みづくりです。どのように地域の問題解決につなげていくかということを具体的に考え、アジアの高いポテンシャルを統合したシステムを構築していく必要があると思います。
現在APRSAFでは、地球観測、通信、宇宙環境利用、宇宙教育という4つのワーキンググループを作り、それぞれがアジア協力を行っています。それらの活動を横断的に連携させていきたいと思います。また、それ以外の分野でも、例えば、惑星探査などをはじめ宇宙科学の分野ではすでにアジア各国との協力が始められているように、それらも含め、JAXA全体として、アジア社会にどう貢献できるかを考え、これからも、アジア諸国との連携や協力を積極的に推進していきたいと思います。そして、アジアの宇宙利用が、世界の地域協力の成功例になることを望んでいます。
石田 中(いしだちゅう)

宇宙利用ミッション本部 アジア協力推進室 室長

1978年より地球観測センターで勤務した後、ワシントン駐在員事務所、地球観測衛星グループ、地球フロンティア研究システム、地球観測事業推進部等を経て、2006年、衛星利用推進センター勤務。2008年より現職を務める。
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アジアが一つになり地球規模の災害・環境問題の改善へ
衛星技術者を育てるSTAR計画に参加して
宇宙から環境を監視するSAFEプロジェクトに期待
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