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JAXAの宇宙教育活動〜心の教育を子どもたちへ〜

子どもはみんなの宝物だからこそ

Q. 「宇宙の学校」やKU-MAが目指すものは何でしょうか?

沖縄でのスクーリングの様子
沖縄でのスクーリングの様子


自分たちで作ったピンホールカメラを試す子どもたち
自分たちで作ったピンホールカメラを試す子どもたち

子どもは、この世に生を授けた父母の子どもではありますが、子どもは次世代を担う、私たちみんなの子どもでもあります。宝物である子どもをみんなでしっかり育て、未来の社会へと続く道筋をきちんと構築することが次世代育成の重要課題です。ですから「宇宙の学校」では、自分の子どもだけではなく、周りの子どももみんなで一緒に育てるという意識を共有するように運営したいと思います。
例えば、沖縄で「宇宙の学校」のスクーリングを開催すると、最初にきちんと人数が決められていたはずなのに、毎回、参加者が定数より増えていきました。隣の家の子も連れてきたとか、おじいちゃんやおばあちゃんも一緒に来たといった具合に、どんどん参加者が増えていったんです。「どうぞどうぞ」と言いながら、体育館に広げられた養生シートの上に譲り合って詰めていき、一緒に工作や実験を楽しみます。そういう感じが、「宇宙の学校」のどの会場でも見られます。
「命を大事にしない子ども」、「夢のない子ども」、「我慢できない子ども」などいろいろな問題があります。批評したり、その責任を他に求める風潮がありますが、子どもに何ができるかを真剣に考えて、どんな小さなことでもいいから一つ一つできることを始めることが大切です。「宇宙の学校」にはサービスを受けるだけの人はひとりもいません。会場を提供する、事務を担当する、教材を提供する、講師を派遣する、ボランティアとして参加する、5歳の子どもであっても後片付けをして帰るなど、役割を担って参加してもらいます。
KU-MAが目指すのは、宇宙の魅力を活かした教育活動を各地に展開していくことです。

Q. 現在の宇宙教育の課題は何だと思われますか?

宇宙教育が、まだ一般化されていないということです。認知度を広げるためにも、宇宙教育は何かということをきちんと定義する必要があると思います。一般的に宇宙教育というと、宇宙や宇宙開発について教えると思われがちです。学校で言えば「理科」の内容の一領域と思っている人も多くいます。
宇宙教育は、(1)宇宙からの視座で物事をとらえる教育、(2)宇宙のもつ魅力を普及し活用する教育である、ということができます。しかし、まだ、こうした考えが共有化されているとはいえません。いろいろな思いで活動している人々や機関が、子どものために共通の方向を定めて協働していくことが重要です。

宇宙教育の理念を全国に広げるために

Q. JAXAの宇宙教育センターに期待することは何でしょうか?

ストローロケットを飛ばす子どもたち
ストローロケットを飛ばす子どもたち


地球と月のお話をする遠藤理事
地球と月のお話をする遠藤理事

宇宙教育に対する理念は、宇宙教育センターにすでに掲げられています。宇宙教育センターは、全国の学校、地域に集う子どもたちへ宇宙の魅力を届けるため、大変な健闘をされています。この理念をさらに推進していくためには、宇宙教育に関する学会を開催し、宇宙教育センターにはその統括役を担ってほしいですね。現在、「宇宙教育」という枠組みの中で、さまざまな取り組みが行われていますが、バラバラに走るのではなく、時々、皆が一堂に会して、その活動を発表し合い、宇宙教育の活動を見直す機会をもつ必要があります。
また、そのような会を開くことで、宇宙教育センター自体が教育界全体に認識されるようになると思います。宇宙教育センターが設立された5年ほど前に比べると、かなり知名度は上がり、実際に宇宙教育を授業に取り入れる学校は増えてきました。しかし、宇宙教育の効果が全国に伝わっているかというと、現実には知らない人もたくさんいます。学校の先生たちの間で、宇宙教育の良さが口コミでもどんどん広がっていくためには、やはり、宇宙教育センターが中心となって、宇宙教育の指導者をどんどん育ててほしいと思います。

Q. これからの展望をお聞かせください。

私は、子どもたちに夢を与えたい、子どもたちの未来や人生を輝かせてあげたいという気持ちをいつももっています。子どもたちに夢を与えられるような社会にできるよう、その一端を、これからも支えていきたいと思います。そういう意味では、今こうして、宇宙教育を通して、子どもたちと接することができるのはとても嬉しいですね。豊かな心をもった子どもを育てたいというKU-MAの活動が、豊かな未来を築く大きな力になるよう、これからも「宇宙の学校」を続けていきたいと思います。

遠藤純夫(えんどうすみお)

KU-MA(NPO法人 子ども・宇宙・未来の会)理事
1962年、東京学芸大学卒業。同年、東京都公立中学校の理科教諭に就任。1991年、東京都立川市立第五中学校長。1996年、同市立第一中学校長に従事。東京都中学校理科教育研究会会長を経て、1998年より全国中学校理科教育研究会会長(現在は同会顧問)。2003年〜2007年、東京学芸大学非常勤講師及び青山学院大学兼任講師。宇宙教育に関しては、2004年、JAXA宇宙教育センター参事。2008年よりNPO法人 子ども・宇宙・未来の会(KU-MA)理事を務め、現在に至る。

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