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3億キロの小窓「はやぶさ運用室」からの報告
第2話19世紀とともに始まった「小惑星科学」への招待
 19世紀の始まりの日に、小惑星の歴史も始まりました。1801年1月1日、イタリア・シチリア島の天文台で、天文学者でもあり僧侶でもあったピアジ(Piazzi,Giuseppe)がはじめて小惑星「セレス」を発見したのです。
 私たちに一見なじみのない「小」惑星ですが、最初の発見から2世紀が経ち、今やその数は10万個にも及んでいます。
 普通の惑星が直径数千キロから数十万キロに及ぶのに比べて、小惑星の中でも最大のセレスでさえ、直径1000キロ程度。イトカワは、小惑星の中では小さい部類に入ります。長軸約500メートルといいますから、東海道新幹線1編成よりもちょっと長いくらいです。「星」というと大きいものを想像する人にとっては、ちょっとがっかりするようなサイズかも知れません。
 そんな小さな小惑星が、なぜ重要なのでしょうか? わざわざそこまで行こうとする「理由」とは何なのでしょうか。
 ひとつには、小惑星が「太陽系の化石」といわれるように、古い太陽系の物質をそのまま残しているかもしれない、と思われているからです。
 星の形を聞かれれれば、普通は球形(五角形の星形は違いますよ)を思い浮かべますよね。恒星だけでなく、地球や火星や金星などの惑星もみな球の形をしています。これはその星が一度、溶けたことを示しています。物質が集まったときの重力エネルギーや、岩石の中にわずかながら存在する放射性物質の崩壊熱により、大きな天体の全体が、少なくとも一度は溶かされたから、と思われているのです。
 小惑星はそうではありません。熱くなったとしても小さいためすぐに冷えてしまい、熱による変成を受けていないと考えられるのです。したがってその表面の物質には太陽系ができた当時の姿がそのまま残されている、と期待されるのです。

[写真:小惑星イトカワ]
何とも形容のしがたいその形状は、私たちの予想を超えていました。やはり、行ってみないと得られない情報というものは必ずあるものなのです。

(第3話 3億km彼方のはやぶさに、手書きのコマンド(命令文)で語りかける へつづく)


+ 第1話
「SSSミーティング」、またの名を「最先端惑星科学ワークショップ」

+ 第2話
19世紀とともに始まった「小惑星科学」への招待
+ 第3話
3億km彼方のはやぶさに、手書きのコマンド(命令文)で語りかける
+ 第4話
「いん石は小惑星起源」の動かぬ証拠を持ち帰る
+ 第5話
はやぶさ運用室の「白板の役割」と「お天気の心配」


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