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3億キロの小窓「はやぶさ運用室」からの報告
第5話 はやぶさ運用室の「白板の役割」と「お天気の心配」
 「はやぶさ」に対してコマンドを送ったり、データを受信したりすることを「運用」といいます。1日の運用時間を終えると、その日の状況を振り返る会議「夕会」が、関係者全員の出席で行われます。
 司会をするのは、「スーパーバイザー」と呼ばれる、その週の運用の責任者。白板は、議論されたことをすぐ形にするのにも都合がよいわけです。
 運用状況の報告にもとづき、明日の運用が決められます。燃料の消費状況、データの受信状況など、探査機の細かい状況をもとに、それぞれの機器担当者やシステム担当者が議論し、明日の運用方針を決めていくわけです。
 決まったことは白板に書かれ、それがそのまま翌日の運用に役立てられます。
 皆さんは、衛星の運用は大きな会議で皆がじっくり議論して決め、それが書類となって関係者に配布され、進んでいくものと思われていたかも知れません。しかし、いま現に動いている探査機を、明日どう動かすかは、その場その場での最新の情報をもとに議論した方がてっとり早く、間違いもありません。その結果をチームで共有するためにも、白板というローテク装置が都合がいいわけです。

 「運用」にまつわるお話をもうひとつ。
 宇宙空間には空気がありません。空気がなければ天気を心配する必要もありません。当然イトカワも、天気予報を必要とはしないはず……、ですがやっぱり天気は心配です。
 その理由は長野県・臼田にあるアンテナです。この場所のお天気が、運用に影響を与えることがあるからです。
 直径64mの超大型アンテナは、悪天候のときには運用ができず、バックアップが必要です。「はやぶさ」がイトカワに接近する8月には、台風も次々と日本列島に近づいては去っていきした。台風の進路予測をにらみながら、臼田のアンテナが耐えられるかどうか、日日協議しながらの運用となりました。
 また、これから冬を迎えると、雪も問題になってきます。お椀のようなパラボラアンテナですから、雪が積もると機能が果たせなくなってしまいます。そのため、臼田地区の雪の降りをにらみながらの運用が続くわけです。

[写真/右上:夕会]
[写真/左下:臼田アンテナ]


+ 第1話
「SSSミーティング」、またの名を「最先端惑星科学ワークショップ」

+ 第2話
19世紀とともに始まった「小惑星科学」への招待
+ 第3話
3億km彼方のはやぶさに、手書きのコマンド(命令文)で語りかける
+ 第4話
「いん石は小惑星起源」の動かぬ証拠を持ち帰る
+ 第5話
はやぶさ運用室の「白板の役割」と「お天気の心配」


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