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3億キロの小窓「はやぶさ運用室」からの報告
第3話 3億km彼方のはやぶさに、手書きのコマンド(命令文)で語りかける
 探査機「はやぶさ」は、言ってしまえばただの機械です。その機械に対して「命」を与えるのは、人間です。しかし人間の言葉がわかるわけではありませんから、機械がわかる言葉に翻訳して、「はやぶさ」に伝える必要があります。この、「はやぶさ」に伝える命令を「コマンド」といいます。
 コマンドは、例えば、「首を35度傾けて、写真を撮りなさい」「この時間になったら赤外線観測装置でデータをとりなさい」というような、仕事の内容を記した命令文です。
運用担当者がひとつひとつ手で(キーボードで)書くコマンドこそ、人間がはやぶさに対して語りかけるための唯一の形式なのです。
 みなさんが目にしているイトカワの写真がどのように撮られたものか、お教えしましょう。
「はやぶさ」は地球から3億キロ以上、光の速度でも15分以上かかってしまう距離にいます。電波で命令を送っても15分。私たちがシャッターを押すように、イトカワがみえたらシャッターを切る命令を送ると、いうふうなことをしていると、往復で30分。まず間違いなくタイミングを逃してしまうことでしょう。
 そのため、あらかじめ探査機の位置とイトカワとの位置を計算し、その方向へカメラを向けるようにコマンドを書き、シャッターを切ります。これにはいくつかのコマンドを組み合わせた「コマンドライン」が必要です。
この「コマンドライン」を書くのは各機器担当者の仕事です。コマンドラインを記述するためには、厳密な位置決定と計算に基づいた判断が必要になります。非常に緊張を伴う作業ですが、この作業の結果、まるで誰かがそこにいて、シャッターチャンスを狙っていたような、鮮明なイトカワの写真が得られているわけです。

[写真: コマンド送信中の運用室]

(第4話 「いん石は小惑星起源」の動かぬ証拠を持ち帰る へつづく)


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19世紀とともに始まった「小惑星科学」への招待
+ 第3話
3億km彼方のはやぶさに、手書きのコマンド(命令文)で語りかける
+ 第4話
「いん石は小惑星起源」の動かぬ証拠を持ち帰る
+ 第5話
はやぶさ運用室の「白板の役割」と「お天気の心配」


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