日本の宇宙科学予算の国家予算に対する比率は、アメリカと比べると10分の1くらいです。また、科学技術立国をめざす投資も、医学やバイオテクノロジーなど直近で実利的成果が上がるような分野に重点がおかれています。これは、どちらかといえばまだ日本は実利主義で、文化に対する許容度がまだまだ低いということだと思います。私は、理科というのは文化だと思っています。欧米の科学館にはレストランやカフェがあり、美術館や音楽のコンサートに行くのと同じ感覚で、大人が楽しむために科学館に行きます。一方、日本では、科学館は勉強のために行く場所で、親が子どもを連れて行くことが多いですよね。これでは駄目だと思うんです。経済的に豊かになるだけでなく、精神的に豊かになることが重要だと思います。そういう意味では、宇宙探査や天文観測などは、私たちの知的好奇心に立脚するような「文化」だと思いますし、それらを「文化」だと認め、大切にするような未来の日本になってほしいと思います。
1983年、東京大学理学部天文学科卒業。東京大学東京天文台(現国立天文台)助手を経て、1994年〜2003年、国立天文台広報普及室長を務める。2005年、同天文台情報センター広報室長。2006年、同天文台情報センター長。2010年、同センター広報室長。専門は、太陽系の彗星、小惑星、流星などの小天体の観測的研究。講演や執筆などを通して、天文学の広報普及活動に尽力。