的川:本日のパネラーは、それぞれちがう立場の方々で、「宇宙で日本の未来をつくる」という趣旨に即したお話をお願いしたいと思います。最初に小野晋也議員にお願いします。小野衆議院議員は学生の時に宇宙航空工学を学び、宇宙科学研究所のご出身です。現在は超党派の宇宙議員連盟の事務局長として活躍なさっています。
「日本流の宇宙開発がある」というのを、海外から来た皆さんにもご認識いただきたいと思います。こちらの絵は(※図1)、私が主張したい問題を描いたものです。日本には、五・七・五・七・七の31文字で意味を表す短歌という文化がありますが、イラストにその短歌を添えました。手を振っている女性は向井宇宙飛行士です。また、漫画は日本で非常に盛んな文化でもあります。
「地上には 閉ざされしこと 多き故 宇宙に向かい 夢の箱舟」
この短歌の意味はこういうことです。最近は、環境や食料の問題が指摘され、この地球社会がだんだん住みづらくなったと感じる方が多くなってきたようです。夢が少なくなった、そんな時代だからこそ、宇宙に向かって夢の箱舟を出そう。箱舟の中に夢を詰め込んで、国境のない宇宙へ出航させよう。いろんな人種、宗教を持った人たちが宇宙ステーションで一緒に生活し、人類の新しいコンセプトを宇宙で創ろうじゃないか。そして、その新しいコンセプトを社会に還元していく中で、新しい時代の地球社会、人類社会の可能性を見出せるのではないか、というのが私が皆さんに提起したい問題です。
図1
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図2
図1,2 © 小野晋也
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次の絵は(※図2)、真ん中の女性が悩んだ顔をして腕組みしています。なぜかというと、目の前の机にはソーセージと玉ねぎしかないので、これだけの材料で何を作ればよいか悩んでいるのです。しかし、女性の左後方には冷蔵庫があります。果たして女性は冷蔵庫の中身をちゃんと見て、自分が持っている材料を有効活用しているのでしょうか。奥にしまい込んで、それがあること自体忘れてしまっているかもしれません。また、右後方には窓があり、外には肉屋、八百屋、金物屋といったお店があります。女性がそのお店で必要なものを入手したら、もっといろいろな可能性が出てくるのではないでしょうか。
これは、宇宙開発にも言えることです。おそらく宇宙に関係する皆さんは、毎年予算規模が絞られていく中で、できることの可能性がだんだん狭まってきたと感じているのではないでしょうか。だからこそ、単に一国主義ではなく、多国間で協力し合ってやっていけば、さらに大きい可能性が開けてくると思います。こういう状況で宇宙開発に求められるのは、「夢」「知恵」「元気」の3つだと考えています。人類が共通の目標として心をときめかせる「夢」を抱くことができるだろうか? その夢を実現するためのよりよき道すじを与えるために、多くの「知恵」を集め、その知恵の中から、さらによき知恵を私たちは生み出せるだろうか? そして、私たちの人生の未来のために、心をときめかせてその目標に突き進んでいく精神的なエネルギー、「元気」を、私たち宇宙開発者が共有することができるだろうか? ということを問題提起させていただきます。夢という人類の大きな目標に向かい、知恵というより良き道すじを選びとり、そしてその道すじを、全人類の心を集めながら、大きなパワーで進んでいくことが、宇宙開発に求められる基本的な考え方だと思います。
的川: たいへん夢のあるお話をしていただきありがとうございました。小野議員は、「夢出せ! 知恵出せ! 元気出せ!」という思いを込めた「ゆちげ運動」を進めていらっしゃいますね。次は向井千秋宇宙飛行士にお願いします。向井さんは、これまで2回宇宙へ行かれました。その経験をふまえ、われわれはこれからどのように前進していけばよいかをお話しいただきたいと思います。 |