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新聞記事を見たのをきっかけに私は宇宙飛行士に応募し、「地球を見てみたい」という夢を持ち、その夢のもとに宇宙飛行士になりました。そして、これまで20年以上宇宙飛行士として働いてきましたが、やはり楽しいこともあるけども、仕事をすれば辛いこともあります。もちろん、その辛いことを克服すればもっと大きい夢も生まれてきます。 ここで、日本の有人宇宙飛行が持つ特異性についてお話ししたいと思います(※図5)。まず私が苦労したのは、日本には自前で人間を打ち上げる手段がないことです。打ち上げ手段がない国が有人宇宙飛行をする時に何をすべきなのか? とずいぶん悩みました。そして私が思ったのは、打ち上げの手段は他の国にお願いをして、宇宙の環境をうまく利用して、私たちができる仕事をしていく、そのことが国際的な競争力を増す1つの方法ではないかと思ったのです。今でも、文化的な面、あるいは科学的な面を含めて、宇宙環境をどのように利用できるかという点に力を入れています。 現在、宇宙開発はとても面白い時期で、過渡期にあると思います。何でもそうですが、ものが固定していない過渡期というのは、夢が進められる時だと思います。 まず、日本は国際宇宙ステーション計画に参加しています。これは単に日本の実験機材が宇宙へ上がるということだけでなく、非常に大きな意義を持ちます。どういうことかと言うと、私が宇宙へ行った時は、アメリカのスペースシャトルを借りて宇宙で実験をしました。たとえば借家の住人と大家さんの関係に似ていて、家を借りていると、釘1本打つにも大家さんに気を遣わなければなりません。しかし、これが広い土地を皆で分担して購入し、その分担金に見合った使い方をする場合、分担金を出しているということは、その土地の所有者でもあります。 国際宇宙ステーションの一部は日本の国有財産です。ということは、その国有財産に関しては、大家さんに気を遣わずに自分で好きなようにデザインできます。そういう意味では、国際的な発言力が1つ強まったといえるでしょう。日本の宇宙開発はそのような過渡期にあると思います。 また、アメリカではスペースシャトル計画がそろそろリタイアの時代になり、次の計画が始まっています。本来は、すでにシャトルから宇宙ステーションの時代になっているはずだったんですが、最近アメリカは、月や火星に向いてしまっています。ここで乗り物を持たない国がやるべきことは、宇宙にある施設をどううまく使えるかという点だと思います。そこに、先ほど小野議員がおっしゃった「夢」と「知恵」、叡智が必要になってきます。たくさんの人から叡智を出していただき、日本として、世界として、それは人類の宝として、宇宙環境をうまく利用していく、そんなアイデアを皆さんに出してほしいと思います。 そして商業化です。私は、宇宙を利用した商業化の波が押し寄せてくればよいと思います。今はまだ金銭的な利益にならないところもあり、宇宙旅行という分野で少しずつ商業化が始まってきたところです。より多くの人がそのことを面白いと感じ、同じような価値観を持ってくれさえすれば、宇宙は私たちに無限の可能性を与えてくれる、夢がつまった場所だと思います。 ですから、夢というのは、どこにでも転がっている。そして宇宙は、そういった夢をさらに拡げていける素晴らしい場所だと思います。私は長期的には、月や火星に、そしてだれもが宇宙へ行けるようになればと思いますが、今は、国際宇宙ステーションをだれでもが使える施設にしていくべきと思います。せっかく皆が叡智を寄せ集めて、16か国が国際的に協力してやっていこうとしているのですから、この国際宇宙ステーションをうまく使っていくことが、私たちが月や火星に行く一歩だと思います。 的川:ありがとうございました。向井さんがおっしゃるように、日本の力で作る宇宙開発に、もっと目を向けてもいいんじゃないかと思いますね。次は、JAXAの立川敬二理事長にお願いします。ご自身の宇宙への思いをお話しいただけたらと思います。 |
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