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有人宇宙探査の意義を考える

これからの宇宙開発

室山:有人・無人を問わず、日本は宇宙開発をどう進めていけばよいかを議論したいと思います。日本がどういう国を目指すかということに関連してくると思いますが、ご意見をいただけますでしょうか?

西本:日本は、科学技術を使って人類の発展に貢献していくべきだと思います。宇宙に関しては、人工衛星を活用したASEAN防災ネットワークの構築を考えています。アジアの国々で分担して複数の衛星システムを整備し、情報を共有すれば、災害が起きた時にほぼリアルタイムで状況を把握することができます。地上システムや人材育成も含めた衛星の技術提供を行うことで、世界に貢献できると考えます。

 日本の宇宙政策は、科学技術の向上、産業振興、安全保障の3つをバランス良く進めていくと申し上げましたが、そのためには、宇宙利用の徹底的な拡大と、産業基盤の強化による自律性の確保が必要だと思っています。宇宙産業は、その市場規模は小さいけれど、裾野が広く、宇宙を利用する産業はたくさんあります。その利用をさらに拡げることで産業を振興させ、産業基盤を強くすることで、日本の宇宙活動の自律性を確保する。日本の宇宙開発はそのような方向性にしたいと思っています。

大竹:やはり日本の科学技術で世界を引っ張って行くことが、日本のあるべき姿だと思います。何か新しいものを目指して世界をリードするという心意気が大事です。宇宙開発においても、日本が得意とする分野で、いろいろな挑戦はするべきだと思います。例えば、宇宙ステーション補給機「こうのとり」は、ISSにランデブーしてドッキングをしますが、その技術は世界的にも高く評価されています。これは日本が得意とする分野です。今の「こうのとり」はISSへ荷物を届けた後は不要品を積んで、大気圏で燃え尽きてしまいますが、それを地球に戻すための技術開発は、やってみるだけの価値があると個人的には思います。その技術を有人飛行にまで突き詰めるかは、きちんとしたシナリオを書いたうえで、いずれ社会に問うてほしいと思っています。

三浦:経済や政治の問題だけではなく、科学技術についても、アジアが一体となってやっていけるシステムをいかに形成するかが重要です。アジアの国々が日本に期待するのは、人材育成を含めたイノベーションの促進だと思いますので、私たちもこの辺りを積極的に進めてまいりたいと思っています。

まとめ

青木:これからの宇宙の決め手は「透明性・信頼醸成措置(TCBM)」だと思います。地球の環境問題がますます重要な問題となる中で、各国がそれぞれの得意な分野で、地上および宇宙からの観測データを用いてより良い地球を作っていく。そのためのTCBMです。また、民間の活力という意味では、サブオービタル(準軌道)飛行の制度を整えて、宇宙文化に親しめるような方向性を作っていくことが重要だろうと思います。

三浦:私は今の経済・政治の低迷は平成の幕末だと思っています。平成幕末に対して、アジア太平洋維新を起こし、日本がこれから蘇るということを世界に啓示しなければならないと考えております。

デュパ:今、有人宇宙探査は転換期だと思います。近い将来、ISSの次の有人探査をどうするのか、月の有人探査を行うのかどうか、国際的に何らかしらの決断がされなければならない時期に来ています。その時期に、こうして国際パートナーの皆さんと議論することができて良かったと思います。

ログスドン:NASAは2030年代の有人火星探査を目指しています。この先それをどういう形で進めて行くかが決められていくと思いますが、国際共同プロジェクトとなった時に、日本が参加しないというシナリオは、私には考えられません。

ヤコブレフ:日本はISSのプロジェクトに参加し、非常に良い成果を出していると思います。宇宙開発には、有人探査、無人探査、地上設備などのインフラ整備、宇宙産業の振興など多岐にわたる活動があります。これからも日本にはそれらの活動を推進していってほしいと思います。

大竹:重要なのは、国民のニーズを取り入れた研究開発をきちんとやること。人々の夢を裏切らない宇宙開発を行っていくことだと思います。また、科学技術の高い水準が、日本の国際社会における位置づけを高くするものであってほしいと思います。

西本:人類の未来はイノベーションなしには拓けないと思います。日本は革新的技術を持っていますので、それを人類の未来の発展のために貢献する。世界あるいはアジアに向けて展開する。という歩みを絶対に止めてはならないと思います。

室山:有人だろうと無人だろうと、宇宙からの視点が、私たちにそれまでとは異なる価値観を与えてくれたり、自分が進むべき方向を指し示してくれたりするのは確かだろうと思います。そういう意味では、本日三浦さんがおっしゃたように、文明という大きな流れの中で“宇宙”を捉え、今後の宇宙探査について十分な議論をしていかなければならないと思いました。日本はまだ議論が足りないように感じますので、このようなシンポジウムは良い機会だったと思います。

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