161. |
損益分岐分析は、経済的実行可能性の他の可能な定義を与えてくれる。この短期分析は、所得及び経費が等しくなる生産高の水準を決定するために異なる生産高の水準についての総所得及び総経費を比較するものである。この分析は、経済的実行可能性が総所得を総経費と比較することにより定められ、著しい経済的損害は損益分岐点以下の水準で生ずる。 |
162. |
経済的実行可能性に係るこれらの概念は、企業の事業にとどまる能力に基づいているように思われる。著しい経済的損害は、企業の存在が脅かされなければ生じない。この定義は、経済の多くの部門で適当なように思われるが、インテルサットの場合には、これが公益並びに国益の考慮により影響されるので、経済的実行可能性が著しい経済的損害の容認可能な尺度ではあり得ない。経済的実行可能性は、我々が同概念を解釈したように、署名当事者の当該事項に関する審議に適合するようには思われない。我々は、署名当事者が著しい経済的損害の語によりインテルサットの継続的運用にとり脅威というほど深刻ではない何物かを意味するつもりであった。ISIがその見解において留意したように、「著しい」とは、「いくらかの」又は「ささいな」という以上の何物かを意味しなければならず、「無能力又はきわどいこと」以下のことを意味し得る。我々は、著しい経済的損害の語がまさにインテルサットの存在を脅かす損害というほど深刻ではない損害の程度を意味するつもりであったという判断を下す。ただし、我々は、その収入が、インテルサットが国際電気通信衛星業務を供給する唯一の衛星システムである場合に実現するであろう水準以下になる場合にはいつでも、インテルサットが必然的に著しい経済的損害を被るとは考えない。 |
164. |
委員会は、著しい経済的損害が長期にわたる組織の全体的な活動からの期待利益がその経費の一部をまかなうが、危険がない償還率に等しい又はそれ以上の投下資本に関する収益率を支払うのには不十分である場合に生ずると信ずる。この状況では、団体の所得がその経費の一部を満たすのには十分であるが、投資家が危険のない投資により利益を得ることができるだけの投資の収益率を支払うことができない。これらの状条の下では、組織は、長期の投資の経費をまかなわねばならない資本を引き続き誘引するにあたって難儀するだろう。従って、経済的損害は広がりを含んでいる。組織の期待収入が、その機会費用に等しい又はそれを越える投下資本に関する収益率を含むその予測経費をまかなう場合には、組織は、いかなる経済的損害をも被ることはない。期待収益率が危険のない収益率以上であるが資本の機会費用以下である場合には、組織は、著しい経済的損害ではなく、経済的損害を被る。ただし、期待収入が予測経費を満たすが投下資本に対する危険のない収益率を支払うのに十分でない場合には、著しいとみなし得る経済的損害が存在する。 |
166. |
我々は、機構の多少珍しい特性の説明となるインテルサットにより定められた財政取極を十分了知する。この手続における経済的損害の概念の考慮は、経済機構としてのインテルサットの性質及びその活動の特性を勘案しなければならない。衛星システムの所有者としてのインテルサットの署名当事者は、民間会社の普通株所有者のように、財政投資へ資本的に貢献する。ただし、インテルサットの所有権は、一般的に、実際の使用を反映するために毎年調整される衛星システムの相対的使用に基づいている。署名当事者は、衛星システムの利用者として、通信業務を顧客に供給するために利用される衛星回線を賃借するための利用料を支払う。更に、衛星システムの非所有者たる利用者は回線を賃借するために利用料を支払い、かつ、業務を供給する。所有者及び非所有者へのインテルサットの業務の供給から生じた収入は、インテルサットの運用経費及び減価償却費を満たし、並びに所有者の資本投資を補償するために使用される。当該機構を民間会社と区別するインテルサットの事例における通常の状況は、所有者が、若干の例外を除いて、システムの利用者であることである。従って、我々は、インテルサットは、その所有者が自身に世界衛星業務を供給するために共に提携し、その所有権及び財政取極は民間会社のそれらとは異なるコンソーシアムであると了解する。 |
167. |
ただし、同時に、インテルサットの事業手続は、民間所有の規制公益事業により行われている手続に等しい。インテルサット運用協定は、部分的に、インテルサット宇宙部分の使用料が「インテルサットの運用維持・管理費、理事会が必要であると決定し得る運用資金の供給、署名当事者がインテルサットに行う投資の償却引当金及び署名当事者の資本の使用の補償金をまかなう目的を有する」と定めている。第8条(a)は、インテルサットの基本的財政上の目標は、自己の経費を満たし、所有者、即ち、署名当事者にその資本上の貢献を補償するための収入を得るのに十分な水準にそれが提供する衛星業務の料率を設定することである。インテルサットは、これを実施するために、その運用経費、諸経費、毎年の減価償却費及び償却引当金並びに収益金の構成部分からなる収入の要件を算定する。インテルサット衛星業務の料率は、その見積収入の要件に等しい収入を生み出すように設定される。この手続は、例えば、コムサットのような民間部門所有の規制公益事業体がその料率を設定するために利用する手続に等しい。主要な相違点は、インテルサットが収入の構成部分を資金の利用についての補償とみなすのに対して、規制公益事業体が収入の構成部分を投資に対する収益率として確認することである。ただし、収入の構成部分の機能は双方の場合において同一、即ち、資本を誘引すること及びその資金の使用について投資家に補償することである。従って、インテルサットの料率は、投下資本に対する収益を含む自己の経費をまかなうように設定される。インテルサットの料率は、使用料の形式で、経費に基づくものであり、従って、インテルサットが衛星業務を供給するために負担する経費の合理的な手段である。インテルサットが得る収入は、投下資本に対する補償を含む自己の経費全体をまかなうように意図される。要するに、我々は、インテルサットが、収入及び収益率の目標を有する民間所有の規制公益事業の態様で自己の衛星システムを運用し、かつ、自己の衛星業務の料率を定めることを信ずる。我々は、インテルサットの財政取極及び民間所有の規制公益事業の財政取極の間の相違にかかわらず、衛星業務からのインテルサットの収入の業務供給のために負担する経費との比較は、著しい経済的損害の可能性を評価するための合理的な基礎である。
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