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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

第6章 宇宙開発推進のための環境整備

第1節 国民の理解

 宇宙開発について、国民の理解と協力を得るよう努めることは、宇宙開発を推進する者の責務である。このため、青少年をはじめ国民各層に対して宇宙開発の意義、内外の開発状況、成果等をわかりやすく伝えるとともに、様々な媒体、イベント等を活用して国民が宇宙開発活動に触れる機会を増やす等、広報活動の格段の強化を図る必要がある。
 このような視点から、以下の施策を講ずる。
(1) 宇宙開発に係る情報を、テレビ、新聞、雑誌、インターネット等、様々なメディアを通じて、広範に提供する。
(2) 展示物や資料映像の提供、人材の派遣等を通して、全国の科学館等との連携や航空宇宙関連科学館等への支援を積極的に行う。
(3) 普及啓発に関する講演会への科学者、専門家の派遣等により、きめ細かな情報提供を行う。
(4) 「宇宙の日」等の機会を活用して、全国の小中学生を対象とした宇宙に係る各種イベントや宇宙開発機関等による施設の公開、公開実験等を行う。
(5) 宇宙開発についての広報活動を強力に推進するため、官民及び内外の宇宙開発機関が協力する実施体制の一層の強化を図る。


第2節 人材養成

 我が国の宇宙開発を、将来にわたって継続的かつ円滑に推進していくためには、宇宙開発に関与する人材を質及び量の両面において充実させることが不可欠である。このため、宇宙開発の推進役である研究者・技術者等の人材、将来の宇宙開発を担う青少年を対象として以下の施策を講ずる。
(1) 宇宙開発の円滑な推進に必要な研究者及び技術者の養成をさらに充実していくため、大学の学部・大学院教育の充実に努める。
また、21世紀の宇宙開発活動の拡がりを展望して、宇宙科学のみならず宇宙からの天文学や地球観測・地球科学、宇宙医学、宇宙環境を利用した物質科学・生命科学等の幅広い分野の研究者及び技術者の養成、さらには、宇宙法・宇宙心理学等の宇宙に関連する人文・社会科学分野の人材育成に努める。
(2) 宇宙開発関係機関における研究者及び技術者の充実強化を図る。
(3) 宇宙開発関係の研究者及び技術者等の養成と資質向上を図るため、留学及び研修の制度を充実するとともに、内外の研究者及び技術者の受け入れのための制度を強化する。
(4) 大学生等を含む若手研究者に対して、宇宙開発機関等への夏期短期受け入れ、宇宙ステーション等を利用した多様な実験機会の提供、海外の研究者との交流、試験研究設備の円滑な利用の促進等の支援を充実する。また、衛星設計のアイデアを募るコンテストを実施し、優秀なものについてはそのアイデアの実現を考慮する。
(5) 未知なる宇宙への挑戦の担い手となる青少年の宇宙開発に対する関心を高めるため、宇宙開発の意義や状況等について、学校教育をはじめ様々な場で一層取り上げられることを期待する。また、スペースキャンプ等の各種イベントを通じて、青少年が宇宙開発の現場に接する様会をできるだけ多く設け、将来宇宙開発の分野で活躍したいという意欲を持つような環境を作る。さらに、青少年の指導者を対象とした研修機会等を設け、その養成に努める。
(6) アジア ・太平洋地城の国々との協力を拡大していく中で、宇宙開発機関等における受け入れを主体とする交流プログラム等の実施により、当該地域の研究者及び技術者を支援する。


第3節 情報流通の促進

 宇宙開発においては、関連する科学技術の分野が広く、また、その進歩が速いことから、研究成果、関連技術情報、観測データ等の有効な活用を図るべく、各種データベースの整備や情報ネットワーク等の情報流通機能の充実に努める。また、国内外の様々な地球観測データ、宇宙環境利用データを利用者に提供するため、諸外国の情報ネットワークとの連携を進める。これらの手段を利用し、技術的波及効果が大きく、多方面にわたる宇宙開発に係る成果の効果的普及に努める。


第4節 宇宙開発に関連する周辺対策

(1) 今後、人工衛星等の打上げ需要が増大かつ多様化するに伴い、打上げの自由度を確保することが必要となることから、今後とも関係者の十分な理解を得るよう努めるとともに、所要の方策を講ずる。
(2) 我が国は、現在、人工衛星の追跡管制においてその一部を米国等の支援に依存しているところであり、引き続き国際的な協力ネットワークの整備に努める。


第5節 資金の確保

 本政策大綱に掲げられた宇宙開発活動の円滑かつ着実な推進を図るため、官民の適切な役割分担の下に、我が国全体としての所要の開発資金の確保に努める。その際、国の予算の着実な拡充とともに、民間資金を含め各般の資金を活用する等、財源の多様化を図る。


第6節 宇宙活動秩序の整備等

(1) 宇宙開発活動が国際的に適切かつ円滑に展開されるよう、宇宙関連条約等の国際的な活動秩序の整備を促進する。
(2) 我が国の宇宙開発活動についても、我が国の宇宙開発をとりまく諸情勢の変化に対応して我が国が負う国際的な義務を考慮しつつ、その適切な方策を講ずるとともに、安全性保持、相互干渉防止等のための手段を十分に講ずる。
(3) 我が国の宇宙開発活動を円滑に進める上で、リスク管理への十分な配慮が必要であり、その一環として、宇宙保険は有効な方策の一つと考えられることから、個々の人工衛星の性格等を十分考慮し、その適切な活用を図る。

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