宇宙法 TOP
目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

第16条 責任に関する相互放棄

1. この条の目的は、宇宙基地を通じての宇宙空間の探査、開発及び利用への参加を助長するため、損害賠償責任に関する請求の参加国及び関係者による相互放棄を確立することにある。この目的を達成するため、当該相互放棄は、広く解釈するものとする。
2. この条の規定の適用上、
(a) 「参加国」には、その協力機関を含む。「参加国」には、また、NASAと日本国政府との間の了解覚書において当該了解覚書の実施について日本国政府の協力機関を援助するものと規定される機関を含む。
(b) 「関係者」とは、次の者をいう。
(1) 参加国との契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の下請契約者を含む。)
(2) 参加国にとっての利用者又は顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。)
(3) 参加国にとっての利用者若しくは顧客(あらゆる段階の利用者又は顧客を含む。)との契約者又はその下請契約者(あらゆる段階の下請契約者を含む。)
この(b)の規定は、いずれかの国又はその政府機関若しくは団体であって(1)から(3)までのいずれかの形態により参加国との関係を有するもの又はその他の形態により(f)に定義する保護される宇宙作業の実施に従事するものについても適用する。「契約者」及び「下請契約者」には、あらゆる種類の供給者を含む。
(c) 「損害」とは、次のものをいう。
(1) 人の身体の傷害その他の健康の障害又は死亡
(2) 財産の損傷若しくは滅失又はその利用価値の喪失
(3) 収入又は収益の喪失
(4) 他の直接的、間接的又は二次的な損害
(d) 「打上げ機」とは、搭載物若しくは人を運ぶ物体(若しくはその一部)であって、打上げ予定のもの、地球から打上げられたもの又は地球に帰還しつつあるものをいう。
(e) 「搭載物」とは、打上げ機に搭載され又は打上げ機で使用されるすべての財産及び宇宙基地上に搭載され又は宇宙基地上で使用されるすべての財産をいう。
(f) 「保護される宇宙作業」とは、この協定、了解覚書及び実施取決めの実施として地球上若しくは宇宙空間で行い又は地球と宇宙空間との間を移動中に行う打上げ機、宇宙基地及び搭載物に係るすべての活動をいう。「保護される宇宙作業」には、少なくとも次の活動を含む。
(1) 打上げ機、移動機、宇宙基地、搭載物又はこれらに関連する支援のための装置、設備若しくは役務の研究、設計、開発、試験、製造、組立て、統合、運用又は利用
(2) 地上支援、試験、訓練、模擬実験、誘導・制御装置又は関連する設備若しくは役務に係るすべての活動
「保護される宇宙作業」には、また、第14条に定めるところに従い、宇宙基地の発展に係るすべての活動を含む。「保護される宇宙作業」には、搭載物を宇宙基地から回収した後に地上で行う活動であって、この協定の実施としての宇宙基地関連活動以外の活動における使用を目的として当該搭載物の生産物又は当該搭載物内の作業方法を更に開発するために行うものを含まない。
3.
(a) 参加国は、責任に関する相互放棄に合意し、これによって、保護される宇宙作業から生ずる損害についての請求であって、次の(1)から(3)までに掲げる者に対するものをすべて放棄する。この相互放棄は、損害を引き起こした者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合に限り適用する。この相互放棄は、次に掲げる者に対する損害賠償請求に適用し、当該請求の法的基礎がいかなるものであるかを問わない。
(1) 他の参加国
(2) 他の参加国の関係者
(3) (1)又は(2)の被雇用者
(b) 更に、参加国は、自己の関係者に対し契約その他の方法によって次のことを要求することにより、(a)に規定する責任に関する相互放棄を自己の関係者に及ぼす。
(1) (a)の(1)から(3)までに掲げる者に対するすべての請求を放棄すること。
(2) 次の段階の自己の関係者に対し、(a)の(1)から(3)までに掲げる者に対するすべての請求を放棄するよう要求すること。
(c) この相互放棄には、損害を引き起こした者又は財産が保護される宇宙作業に関係しており、かつ、損害を受けた者又は財産が保護される宇宙作業に関係していたために当該損害を受けた場合に責任条約から生ずる責任に関する相互放棄を含むことが確認される。
(d) この条の他の規定にかかわらず、この相互放棄は、次の請求には適用しない。
(1) 参加国と当該参加国の関係者との間又は同一の参加国の関係者の間の請求
(2) 自然人の身体の傷害その他の健康の障害又は死亡について当該自然人又はその遺産管理人、遺族若しくは代位権者(代位権者が参加国である場合を除く。)によって行われる請求
(3) 悪意によって引き起こされた損害についての請求
(4) 知的所有権に係る請求
(5) 参加国が責任に関する相互放棄を(b)の規定に従って自己の関係者に及ぼすことができなかったことから生ずる損害についての請求
(e) (d)(2)の規定に関し、日本国政府が代位する請求が国家公務員災害補償法に基づかない場合には、日本国政府は、2(a)に規定する援助する機関が3(a)の(1)から(3)までに掲げる者に対し当該請求から生じる債務を前条2の規定に合致する方法で及び日本国の関係法令に従って補てんすることを確保することにより、当該請求を放棄する義務を履行する。この条のいかなる規定も、日本国政府が当該請求を放棄することを妨げるものではない。
(f) この条のいかなる規定も、請求又は訴えの基礎を創設するものと解してはならない。

BACK English