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目次 巻頭言 凡例 第1章 第2章
第3章 第4章 後書き アペンディクス 索引

第8条 主として運用及び利用に関連する宇宙基地計画の運営面

3 利用

3.a NASA、RSA及びCSAは、宇宙基地の組立て、保守及び運用並びに宇宙基地に対する役務の提供を行うため、宇宙基地の基盤要素を提供する。NASA、RSA及びCSAは、また、3.bに定めるところにより、基盤要素から得られる資源を他の参加機関に提供する。利用用の利用単位を提供する参加機関は、その利用単位の利用権を保持する。ただし、他の参加機関による資源の提供の代償としての当該他の参加機関への配分であって、当該他の参加機関の基盤要素による貢献に基づくもの並びにNASAの全体的な計画運営、システム・エンジニアリング及びシステム統合における役割を考慮するものを除く。基盤要素を提供する参加機関は、このようにして得られた配分と等価の利用用の利用単位の利用権を、適当な場合には、最初に自己の利用要素の利用権として蓄積する。よって、利用用の利用単位の利用権の具体的な配分は、次のとおりとする。
 NASAは、自己の実験棟における利用用の利用単位の97.7%及び自己の搭載物の外部装着場所の97.7%について利用権を保持し、並びに欧州与圧実験室における利用用の利用単位の46.7%及びJEMにおける利用用の利用単位の46.7%について利用権を得る。
 RSAは、自己の実験棟における利用用の利用単位の100%及び自己の搭載物の外部装着場所の100%について利用権を保持する。
 GOJは、JEMにおける利用用の利用単位の51%について利用権を保持する。
 ESAは、欧州与圧実験室における利用用の利用単位の51%について利用権を保持する。
 CSAは、NASA、GOJ及びESAが提供する宇宙基地の利用用の利用単位の2.3%と等価の利用権を得る。
各参加機関は、自己に配分された利用用の利用単位の利用者の選択を管理する。その管理は、CUPの作成のためにこのMOU並びにNASAとRSAとの間、NASAとESAとの間及びNASAとCSAとの間の了解覚書に定める手続によって行う。
3.b 資源の配分
 3.cに定めるところにより配分する搭乗員作業時間を除き、宇宙基地の資源の参加機関の間における配分は、次の方法に従って行う。RSAは、第6条に別段の定めがある場合を除くほか、RSAが提供する運用用及び利用用の資源の100%を保持する。NASA及びCSAの基盤要素により提供される資源は、第6条の規定に従ってRSAに提供される資源を除き、NASA、GOJ、ESA及びCSAが利用することができる。これらの資源は、3.dに定めるところにより配分なしに利用することができる資源を除き、次のように配分する。1.d.1に規定する運用用の資源であって、NASA、GOJ、ESA及びCSAが提供する要素が必要とするものは、別にする。残余の資源は、利用用の資源であり、この資源は、次のように配分する。利用用の資源の76.6%は、NASAに配分する。利用用の資源の12.8%は、GOJに配分する。利用用の資源の8.3%は、ESAに配分する。利用用の資源の2.3%は、CSAに配分する。これらの利用用の資源の配分は、参加機関に行われるものであって要素に行われるものではなく、参加機関は、COUPに合致する範囲内で、当該配分を宇宙基地のいかなる要素上においても利用することができる。参加機関に配分された宇宙基地の資源を利用するための計画は、この条に定める統合された計画立案の仕組みを通じて作成される。これらの利用用の資源の配分を超える利用用の資源は、各参加機関が交換又は他の参加機関からの購入を通じて調達することができる。
3.c 搭乗員作業時間の配分
3.c.1 搭乗員が3人の期間中は、宇宙基地の組立て、その検証及び宇宙基地を運用状態に維持することに必要な搭乗員作業時間は、別にする。残余の搭乗員作業時間は、利用用に配分する。利用用の搭乗員作業時間のうち、50%はNASAに配分し、50%はRSAに配分する。これらの配分は、他の参加機関への利用用の搭乗員作業時間の配分が開始されるとき、実施取極により調整する。その調整により、利用用の搭乗員作業時間の12.8%は、GOJに配分する。
3.c.2 NASA提供の居住棟が装備され及びNASA提供の搭乗員救助機の初期の運用上の検証が行われたことにより搭乗員の定員が7人になった後、RSAは、自己の要素のためのシステム運用及び自己の要素上の利用活動を実施するため、軌道上の3人相当の搭乗員作業時間の権利を有する。NASA、GOJ、ESA及びCSAは、自己の要素のためのシステム運用及び自己の要素上の利用活動を実施するため、軌道上の4人相当の搭乗員作業時間の権利を有する。この権利は、次のように配分する。宇宙基地を運用状態に維持するために必要な搭乗員作業時間は、別にする。残余の搭乗員作業時間は、利用用に配分する。残余の利用用の搭乗員作業時間のうち、76.6%はNASAに、12.8%はGOJに、8.3%はESAに及び2.3%はCSAに配分する。
3.c.3 搭乗員作業時間の参加機関に対する配分は、参加機関の活動のための搭乗員作業時間が衡平に分配されることを確保することを目的として行われる。搭乗員の活動の計画立案及び実施は、第11条6の規定に従って統合する。
3.d 宇宙基地の資源並びに輸送及び通信の業務
3.d.1 宇宙基地の利用用の資源は、電力、利用者用役務提供能力(CSA提供のSPDMの役務提供能力を含む。)、排熱能力、データ処理能力、搭乗員作業時間及びEVA(訳者注:船外活動)能力とする。配分を行うべき宇宙基地の利用用の資源の初期の項目は、電力及び搭乗員作業時間とする。他のすべての宇宙基地の利用用の資源は、配分なしに利用することができる。NASA、GOJ、ESA及びRSAは、第3条に定める宇宙基地の運用及び十分な国際的利用を支援するため、第12条1に定めるところにより及び輸送についての統合的な計画立案手続により、打上げ及び回収の輸送業務を提供する。各参加機関は、自己の宇宙基地の利用計画を支援するため、毎年実際に運行する宇宙基地の打上げ及び回収の輸送の飛行において宇宙基地の利用者搭載物のために利用可能な総搭載能力のうち、この能力を自ら提供することにより又は輸送業務を提供する他の参加機関から購入することにより、自己の利用用の資源の配分に相応する打上げ及び回収の輸送業務を取得する権利を有する。NASA、GOJ、ESA及びRSAは、すべての参加機関が自己の宇宙基地の利用計画を支援するために打上げ及び回収の輸送業務を取得する権利を行使することができるよう、この条及び第12条に定める計画立案の仕組みを通じて確保する。NASA、GOJ、ESA及びRSAは、最初に、自己の搭載物の打上げ及び回収の輸送能力を提供することにより、この権利を行使することが期待される(この規定は、宇宙基地の発展に関連して宇宙基地のために提供される打上げ及び回収の輸送能力については適用しない。)。同様に、参加機関は、自己の利用用の資源の配分に相応する範囲内で、TDRSS、RSAデータ中継衛星システム及び適当な場合には他の参加機関のデータ伝送能力が提供する通信業務であって、第12条2に定めるところにより及びCOUPに従って宇宙基地のために利用可能なものを取得する権利を有する。3.eに規定するUOPは、NASA及び他の参加機関が経験を積むと共に、必要に応じて、利用用の資源の項目及び配分された利用用の資源の項目を新たにする。
3.d.2 GOJに対する利用用の利用単位及び利用用の資源の配分は、GOJとNASAとの間で合意されるところに従い、JEMの与圧部が宇宙基地に取り付けられ、国際標準搭載物ラックにより装備され及び検証された後に開始する。
3.e 当事者は、宇宙基地を安全で効率的かつ効果的な方法で利用することを目標とする。このため、MCBは、利用活動の整合性を確保するためにUOPを設立した。UOPは、GOJ、NASA及び他の参加機関からの各1人の構成員からなる。構成員は、その指名に係る代理をUOPの会合に出席させることができる。更に、各参加機関は、UOPの活動を支援するために必要な関連の専門家の援助を得ることができる。UOPは、コンセンサス方式によって決定を行う。いずれかの問題についてコンセンサスに達することができない場合には、その問題は、解決のためにMCBに付託する。GOJ及びNASAは、効率的な運営のためには、UOPが、利用上の問題をMCBに付託することなく、すべての利用上の問題を事務的にかつできる限り速やかに解決する責任を引き受けるべきであることを認識する。
3.f UOPは、利用運営計画(UMP)を作成し、承認し、及び維持する。UMPには、長期計画レベル、詳細計画レベル及び実施レベルの利用運営の間の関係を定める。利用運営にあたっては、長期計画レベルはUOPが、詳細計画レベルは2.eに規定する統合された詳細計画運用機関が、また、実施レベルは実施機関及びフィールド・センターが、それぞれ、調整する。UMPには、また、3.eの規定に合致する範囲内で、宇宙基地の要素(すべての参加機関が提供する利用者支援センターその他の宇宙基地専用の地上要素を含む。)の利用のための手続を定め、標準の利用者統合支援及び利用者運用支援を定め、並びに分配された利用者統合及び利用者運用の方法を定める。UMPには、3.gに規定する参加機関の利用計画及びCUPを準備するための手続(新たな情報に応じてこれらの計画を調整するための手続を含む。)を定める。
3.g 宇宙基地の利用計画
3.g.1 GOJ、NASA及び他の参加機関は、毎年、自己に配分された宇宙基地の利用用の利用単位及び利用用の資源のすべての利用、自己が取得する権利を有する打上げ及び回収の輸送業務並びにデータ伝送能力による通信業務の利用並びに配分が行われない宇宙基地の利用用の資源及び宇宙基地専用の地上要素のすべての利用に関する5年後についての利用計画を、それぞれ、作成する。各参加機関は、使用可能な利用用の利用単位の範囲内で、貯蔵(補給運搬容器(適用のあるIDRDに定めるところにより利用者装置を打上げ又は地上へ回収するもの)内で行う一時的な軌道上の貯蔵を除く。)に対する自己の利用者の要求を満たすものとする。GOJ、NASA及び他の参加機関は、それぞれ、自己の利用計画において、利用者活動(飛行要素の利用を支援するための利用者支援センターその他の宇宙基地専用の地上要素の利用を含む。)に優先順位を付し及びこれらの活動に関する適当な日程を提案する。各参加機関の利用計画は、利用者活動の成功裡の実施を確保するために必要なすべての要因(搭乗員の技能及び特別の要求であって提案される搭載物に関連するものについての関連情報を含む。)を考慮に入れる。
3.g.2 GOJ及びNASAは、それぞれ、自己の利用計画をUOPに提出する。UOPは、GOJ、NASA及び他の参加機関の利用計画を用いて、すべての関連要因(各要素の提供者が自己の要素のために提案している勧告であって利用者間の技術上及び運用上の不整合の解決に関するものを含む。)を考慮の上、飛行要素及び宇宙基地専用の地上要素の利用、打上げ及び回収の輸送業務の利用並びにデータ伝送能力の利用に関するCUPを作成する。各参加機関は、宇宙基地を利用するに当たり、他の参加機関による宇宙基地の利用に重大な悪影響を及ぼすことを避けるよう、このMOUに定める仕組みを通じて努力する。UOPが宇宙基地の飛行要素の利用又はこれに関連する宇宙基地専用の地上要素の利用に関してコンセンサスに達することができない場合には、問題は、解決のためにMCBに付託する。
3.g.3 GOJ、NASA及び他の参加機関が提案する利用計画は、これが完全にそれぞれの配分の範囲内であり、かつ、相互の利用計画に運用上又は技術上抵触しない場合には、自動的に承認される。もっとも、政府間協定第9条3の(a)及び(b)の規定は、適用するものとする。
3.g.4 GOJが政府間協定第9条3の(a)又は(b)の規定に基づく決定を伝達する必要がある場合には、その決定は、外交上の経路を通じて速やかに伝達する。
3.h 各参加機関は、利用者活動に関する統合された詳細計画レベルの計画立案に参加する。このため、各参加機関は、2.eに規定する運用機関に対して人員を派遣する。これらの人員は、利用者活動に関する統合された詳細計画レベルの計画立案に参加し及び利用者活動に関する長期計画レベルの計画立案を支援する。GOJ及びNASAは、GOJの人員が遂行すべき任務について協議し、及び合意する。GOJ及びNASAは、又、GOJの人員の数及びこれらの人員に関連するすべての事務的な条件について協議し、及び合意する。
3.i 利用要素を提供する参加機関は、他の参加機関の利用者又は利用者としての他の参加機関による自己の利用要素の利用のために標準の利用者統合支援及び利用者運用支援を提供する責任を有する。自己の利用要素の利用において利用者を支援する参加機関は、自己の搭載物を地上で統合する責任を有する。その統合は、関係参加機関の間で合意された適当な標準インタフェースの水準で行われる。利用要素を提供する参加機関は、IDRDの準備及び実施を支援するため、自己の利用要素に搭載する統合される搭載物について、エンジニアリング上、運用上及びソフトウエア上の適合性に関する搭載性評価も行う。同様に、CSAは、自己が提供する飛行要素に関し、他の参加機関の利用者又は利用者としての他の参加機関に対して標準の利用者統合支援及び利用者運用支援を提供する責任を有する。NASA及びRSAは、必要に応じて、自己が提供する宇宙基地のシステム又はサブシステムに関し、他の参加機関の利用者又は利用者としての他の参加機関に対して標準の利用者統合支援及び利用者運用支援を提供する責任を有する。
3.j NASA、GOJ、ESA及びCSAは、NASAが設置し及び運営するPOICによるその責務の遂行に参加する。POICは、宇宙基地全体としての次の統合された機能に対する責務を有する。
 宇宙基地の利用者活動の計画立案の全体的な統合
 宇宙基地の利用者活動の実施に関する全体的な運営及び調整
 利用者活動をシステム運用活動と調整するためのSSCCとの間の活動
NASAは、また、POIC内に自己の要素専用の搭載物運用統合機能を設定する。NASA、GOJ、ESA及びCSAは、POICに対して人員を派遣する。これらの人員は、参加機関が提供する利用要素及び搭載物に関する専門的知識を提供し、POICを本拠とする統合された活動に参加し、また、当該参加機関が提供する利用要素及び搭載物に重点を置きつつ実時間で行われる軌道上の活動を支援する。GOJ及びNASAは、GOJの人員が遂行すべき任務について協議し、及び合意する。GOJ及びNASAは、また、GOJの人員の数及びこれらの人員に関連するすべての事務的な条件について協議し、及び合意する。参加機関は、また、合意により、他の場所における実施レベルの活動に参加し、及びこの活動に人員を提供することができる。RSAは、実施取極において合意するところによりこれらの活動に参加する。NASA、GOJ、ESA及びRSAは、自己が提供する各利用要素におけるすべての搭載物の運用の統合のため、要素専用の搭載物運用統合機能であってIDRDに従って及びPOICと調整を行いつつ活動するものを設定する。POIC及びSSCCの統合された機能の間の関係は、OMPに定める。NASA、GOJ、ESA及びRSAは、また、宇宙基地の利用者による利用者活動の計画立案及び実施を支援するために利用者支援センターを提供する。要素専用の搭載物運用統合機能、利用者支援機能及びPOICの統合された機能の間の関係は、UMPに定める。
3.k COUPの作成の後に生ずる問題を解決するに当たり、その問題が利用者間の技術上又は運用上の不整合である場合には、関係する利用者が利用単位を有する要素を提供している参加機関及び影響を受ける他の参加機関は、問題の解決のため、適当な長期計画レベル、詳細計画レベル及び実施レベルの組織又は機関に対して適当な分析及び勧告を提供する。もっとも、問題が、単一の宇宙基地の要素内にのみ影響を与え、かつ、その要素の提供者の利用者にのみ影響を与える場合には、その要素を提供している参加機関が、COUPの内容に従ってその問題を解決する責任を有する。
3.1 GOJ、NASA及び他の参加機関は、UMPに定める手続に従い、自己の配分のいかなる部分についても、いつでも、交換若しくは相互の間の売却を行い又は他の取極を行うことができるものとし、また、自己に配分された利用単位の利用権について個々に又は一括して自由に取引することができる。交換又は売却の条件は、案件毎に取引の当事者が決定する。配分を提供する参加機関は、自己がこのMOUの下で負う義務が履行されることを確保する。GOJ、NASA及び他の参加機関は、売却から得られる収入を保持することができる。
3.m GOJ及びNASAは、CUPで承認される標準又は特別の利用者統合支援又は利用者運用支援及びCOPで定められる要求を十分に支援するため、宇宙基地専用の地上要素(利用者支援センターを含む。)を相互に及び他の参加機関のために利用可能にする。参加機関が他の参加機関の利用者又は利用者としての他の参加機関に対して提供する特別の利用者統合支援及び利用者運用支援は、実費弁償の原則により、同様の役務に対して同等の者に通常課する価格で提供する。

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