H-II ロケットは、重量2トン級の静止衛星打ち上げ能力をもつ、全段自主技術による2段式ロケットです。静止軌道以外にも、低・中高度の各種軌道に打ち上げることができます。1トン程度の静止衛星なら、同時に2個打ち上げることが可能で、経済的なロケットです。第1段には、H-II ロケットのために新たに開発した、真空中で約110トンの推力をもつLE-7と呼ばれる大型で高性能な液体酸素・液体水素エンジンを、また第2段には、H-I ロケットで開発した、再着火能力をもつLE-5エンジンをさらに高性能、高信頼化したLE-5Aエンジンを採用しています。誘導システムは、H-I 開発成果をさらに発展させた慣性誘導方式を採用しています。
H-II ロケットは、1994年の初フライト(試験機1号機)成功以来、7機の打ち上げを実施しましたが、1998年の5号機の軌道投入失敗に続く、1999年の8号機打ち上げ失敗により、以後に予定していた7号機の打ち上げを中止し、その使命を終了しました。H-II ロケットの開発を通じて培われた技術は、今後、その改良型であるH-IIAロケットの開発に活かされることとなります。
全長 | 50m |
---|---|
外径 | 4m |
全備重量 | 260.0トン(人工衛星は含まない) |
誘導方式 | ストラップダウン慣性誘導方式 |
号機 | 打ち上げ日 | ベイロード |
---|---|---|
TR-I-1 | 1988/9/6 | H-II ロケットの開発に必要な技術データの取得 |
TR-I-2 | 1989/1/27 | |
TR-I-3 | 1989/8/20 | |
試験機 1号機 |
1994/2/4 | 軌道再突入実験機「りゅうせい」(OREX) H-II性能確認用ペイロード「みょうじょう(VEP)」 |
試験機 2号機 |
1994/8/28 | 技術試験衛星VI型「きく6号」(ETS-VI) |
試験機 3号機 |
1995/3/18 | 宇宙実験・観測フリーフライヤ「SFU」 静止気象衛星5号「ひまわり5号」(GMS-5) |
4号機 | 1996/8/17 | 地球観測プラットフォーム技術衛星「みどり」(ADEOS) アマチュア衛星3号「ふじ3号」(JAS-2) |
6号機 | 1997/11/28 | 熱帯降雨観測衛星「TRMM」 技術試験衛星VII型「きく7号」(ETS-VII) |
5号機 | 1998/2/21 | 通信放送技術衛星「かけはし」(COMETS) |
8号機 | 1999/11/15 | 運輸多目的衛星「MTSAT」 ※第1段エンジンの燃焼の異常停止により衛星の軌道投入に失敗しました |