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衛星による防災活動〜衛星画像の利用〜
オルビタ 写真「アジアを災害から守るために」インドネシア国立航空宇宙研究所  天然資源・環境モニタリング部長 オルビタ・ロスウィンティアルティ


噴煙をあげるジャワ島メラピ火山口。
南側斜面に、火砕流と思われる白い帯状の領域が見られる。
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被災前
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被災後
ジャワ島中部地震の被災地。拡大図はジョクジャカルタ空港。被災前に比べ茶色の懸濁水域などが変化している
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ジャカルタの洪水。青が浸水箇所を示す。
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Q. 災害対策に関して、どのような仕事をなさっているのでしょうか?

インドネシア国立航空宇宙研究所(LAPAN)の天然資源・環境モニタリング部の責任者を務めています。同部では、気象観測、気候予測、洪水が発生しやすい地域の監視、火災が発生しやすい場所の格付け、森林火災の監視、植生状況のモニタリング、水田の地盤評価を行っています。また、災害発生時の緊急観測も私たちの仕事です。これらの活動は、災害管理の一環であり、インドネシアの災害被害を減らすことを目的としています。

Q. 災害活動に関して、インドネシアが抱えている問題とは何でしょうか?

インドネシアは広大な国土を有しており、環太平洋火山帯の赤道付近に位置しています。そのため、水災害、地質災害、土地の劣化による被害がおきやすい環境にあります。現在、インドネシアが抱えている問題は、津波などに関するデータの不足、災害の影響に対する意識が低いこと、データを供給する側と当局の協力不足が挙げられます。
衛星リモートセンシングによる情報は、災害管理全般に必要です。特に、気候・気象予測、異常気象、地震、地滑り、津波、火山、森林・土地火災などの危険に関する情報は、災害管理に最も有効的です。ですから、JAXAなどデータを供給してくださる方との協力体制を強め、衛星からの情報を積極的に取り入れていきたいと思います。さらには、その衛星データを他の情報と組み合わせることによって、災害を含めた社会的な問題の解決に貢献することができればと思います。

Q. 衛星を使った災害活動への支援は、どのようなことを期待されますか?

災害発生前の段階では、衛星画像は危険の査定、緩和、予防、準備に活用されます。また、災害発生時には、被害状況と避難場所を把握するために使用され、災害後には、復興と持続的な開発活動に応用することができます。
すでにインドネシアでは、発災時の緊急観測として、地球観測衛星「だいち」の画像を数回にわたって活用してきました。例えば、2006年5月のジャワ島メラピ山の火山活動、2006年5月のジャワ島中部地震、2007年のジャカルタ洪水、2007年3月の西スマトラ地震が挙げられます。このように、「だいち」の画像がインドネシアの災害活動支援に非常に有効的であることが分かっています。さらに、タイムリーな情報を受け取って利用することができれば、もっと素晴らしい災害対策をとれると思います。

Q. JAXAなどがアジア太平洋域の災害関連情報を共有するプロジェクト、「センチネル・アジア」の活動についてどのように思われますか?

「センチネル・アジア」のこれまでの活動には非常に満足しています。「センチネル・アジア」の存在があったからこそ、災害が起きた時の緊急対応が可能になりました。しかし、発足からまだ一年余りですので、インターネット上での情報更新などで改善の余地はあります。将来的には、「センチネル・アジア」の活動能力の強化と、使用できるデータの種類の増加を期待しています。そのためにも、このシステムをアジア諸国全体に認識させることが大切だと思います。

Q. インドネシアの災害活動は、将来どのようにするべきとお考えでしょうか?

インドネシアは2004年の壊滅的な津波被害以来、自然災害を繰り返し経験してきました。このような経験から、インドネシアは災害対策についての準備や意識を高めなければならないという教訓を学んできました。将来は、関係研究機関・省庁が、全国的あるいは国際的な協力関係を強化し、災害による人的被害や社会・経済活動の混乱を軽減していかなければならないと思います。また、衛星からの情報を災害管理により一層活用するためにも、衛星技術、衛星データを応用できるだけの知識と能力を構築していく必要があると思います。

Q.今後、JAXAに対して、どの様な要望がありますでしょうか?

これからも衛星技術の向上とその応用開発を継続していただき、アジアの発展途上国を災害から守るために貢献していただきたいと思います。



オルビタ・ロスウィンティアルティ(Orbita Roswintiarti)
1985年、インドネシア国立バンドン工科大学にて理学士号取得。1991年、米国ノースカロライナ州立大学にて理学修士号取得、同大学にて1999年、大気科学博士号取得。1986年からLAPANにてリモートセンシングに関する科学者として業務につき、2004年より現職。
小澤秀司 西川智 山城達也/南雲宗浩 オルビタ・ロスウィンティアルティ JAXAの地球観測の歩み
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