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これまでの日本の宇宙探査はサイエンスとしては大変高い評価を得ていましたが、公開されるのはグラフなどで、そのグラフの意味を読み解けなければ分からないといったものでした。それに比べて「はやぶさ」の影が入った写真は、それ1枚あれば「はやぶさ」の意味がストレートに伝わります。「はやぶさ」の活躍で、初めて日本における宇宙探査が公に認められたのではないでしょうか。 ところが、現在日本では、宇宙科学研究にかける予算が足りないという状況にあります。これまで宇宙探査は、全宇宙予算の10分の1くらいの規模でやってきましたが、太陽科学、X線天文学、高層大気の研究、磁気圏の研究などいろいろな分野があり、優秀な人材はいても充分な予算がありません。するとどうなるかと言うと、宇宙探査のスタンスが減ってきます。80年代以降、日本は年間1機の探査機を打ち上げてきましたが、今では1年半から2年に1機と減っています。そこでもう一度、宇宙探査の意義を皆さんに考えていただきたいのです。 宇宙探査は単なる知的興味だけで行うものではありません。例えば、19世紀のイギリスは植民地経営において何をしたかというと、まず探検家がその土地に行き、そこでどういう植物が生えているか、どういう地形になっているかを調査します。それはもちろん知的興味で行く訳ですが、イギリスという当時の帝国主義国家をまわしていく上で、植民地経営の基礎データが非常に重要だったのです。これは、人類の宇宙進出にも同じことが言えて、長期的に見ると人類が宇宙へ進出するのに役立つのだから、現在の日本の減った宇宙予算の中で重点的に宇宙探査にかけてもいいんじゃないかと思います。そういうことをしていかないと、宇宙進出のルートがつかないのです。 アメリカは月探査と有人火星探査のビジョンを出しましたが、本当に月や火星でよいのか?という疑問があります。もっと大きな宝が他の惑星あるいは彗星や小惑星にあるかもしれないのです。しかし現状ではデータ不足でそれが分かりません。その道筋をたてるためにも、充分なデータが必要ですし、宇宙探査をやっていくべきだと思います。まさに、有人探査との関係はそれでしょう。 先ほど川口先生がおっしゃった3つの柱ということから考えると、少なくても年に1機は探査機を打ち上げてほしいです。1つのプロジェクトを5年でまわしていけば、1人の研究人生が30年だとして、その間に5回探査ができるということになります。そうすれば、一般的に見ても、宇宙科学者は楽しい仕事だよなって思えるようになってくるでしょうし、そういう社会になるよう私はこれからも書いていきたいと思います。 的川:松浦さんは「はやぶさ」の影が映った写真が大変印象的だったとおっしゃいましたが、中には、後ろに太陽があるんだから影が映るのが当たり前だという方もいらっしゃいます。やはり、皆さんがどう感じるかとても重要な視点であって、松浦さんはそういう点で非常に新鮮な見方を提供していただいています。 先日パリの会議で会った友人に、「一般のヨーロッパの人たちにとって、日本は従来は経済的な存在感がとても高かったけど、今回のはやぶさで知的な存在感も随分高まったね」と言われ、大変嬉しかったです。今後そういったことを目指していく上で、アメリカは大変強大なライバルであると共に、とても大事な友人でもあります。 そのアメリカから来ていただいた米国惑星協会のフリードマン博士に、これからの太陽系探査において日本が世界で占める位置、日本にどのようなことを期待されるかをお話いただければと思います。 ![]()
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